研究課題/領域番号 |
23590787
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
玉腰 浩司 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30262900)
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キーワード | 生活習慣病 / 出生時体重 |
研究概要 |
2012年度は、2011年に完成した糖尿病発症データベースを用いて、出生時体重と糖尿病発症との関連を検討した。このデータベースは2002年(ベースライン調査)、2004年、2007年、2011年に行った病歴調査の結果と2002年以降の健診における血糖値をもとに作成したものである。糖尿病発症年は、4度の病歴調査において聴取した糖尿病の発症年齢と2002年以降の健診において血糖値が126g/dl以上に初めて達した年齢のうち最も早いものとした。出生時体重と糖尿病発症リスクとの関連をコックスの比例ハザードモデルを用いて検討した。追跡期間は、糖尿病発症者は発症年齢、非発症者は2002年以降の最終生存確認日における年齢とした。解析対象者は3274名(平均年齢±標準偏差:46.4±7.1歳)(男性2441名:46.8±7.1、女性833名:45.3±6.8)であった。出生時体重別の糖尿病発症者の割合は、2500g未満、2500-3000g未満、3000-3500g未満、3500g以上の順に、38/223(17.0%)、206/1510(13.6%)、134/1258(10.7%)、35/283(12.4%)であり、出生時体重が低いほど糖尿病発症者の割合が高かった(傾向性p=0.011)。2500-3000g未満群を基準としたHR(95%信頼区間)は、2500g未満は1.40(0.99-1.98)(p=0.055)、3000-3500g未満は0.95(0.76-1.18)(p=0.608)、3500g以上は1.14(0.80-1.63)(p=0.48)であり、2500g未満の低体重で生まれた群において糖尿病発症リスクが有意に高い傾向がみられた。この関連は、性別、喫煙歴、飲酒歴で調整しても変わらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに構築した糖尿病発症情報の入ったデータベースと用いて、出生時体重と糖尿病発症リスクを検討した結果、2500g未満の低出生体重で生まれた人は糖尿病を発症するリスクが高い傾向がみられた。過去に、糖尿病の発症年齢を把握して出生時体重との関連を検討した研究はない。日本人を対象とした本研究結果は、現在推進されている健やか親子21で謳われている「低出生体重児の割合の減少」という目標の根拠となる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成14年度に行った初回アンケート調査以降、経過観察した対象に対して、糖尿病発症情報に加えて心血管事故情報が入ったデータベースが構築されている。コホート研究では、病歴把握調査も行っており、生活習慣病や心血管事故の発症年齢も聴取できており、引き続きこのデータを使った前向きな解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はコホート集団に対するアンケート調査を行う予定であり、それに伴う支出を計画している。残りの部分で、引き続き統計ソフトの充実など研究環境の整備に努めるとともに、研究の遂行に役立つ情報、知識を持つ研究者と積極的に交流を図るための旅費並びに成果発表に関わる論文校閲、旅費等への支出を賄う予定である。
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