研究実績の概要 |
本年度は歯科医師(全国の歯科医師会員)を対象とした、口腔状態と全身の健康との関連を検討するためのコホート研究について、研究期間を延長し、一部の県歯科医師会で残っていた追跡調査を実施、予定の追跡調査を完了することができた。 また新たな解析として、ベースライン時点の歯磨き回数および歯間部清掃用具の使用と、その後の死亡リスクとの関連を検討した。分析対象は19,733名(ベースライン時点の平均年齢±標準偏差 51.4±11.6歳、女性1,609名[8.2%])であり、平均追跡期間9.6年間の追跡期間中に、1,086名の死亡が確認された。 歯磨き回数が1日2回のグループを1とした、1日1回以下、3回、4回以上のグループの多変量調整死亡ハザード比は、それぞれ1.00、0.97、1.00(trend P = 0.87)となり、歯磨き回数と死亡リスクとの間には明らかな関連を認めなかった。一方、歯間部清掃用具をほとんど使用しないグループを1とした、週4回以下使用、週5回以上使用の多変量調整死亡ハザード比は、それぞれ0.88、0.84(trend P = 0.020)であり、歯間部清掃用具の使用者で死亡リスクが低下する傾向がみられた。この関係は、調査参加時点で65歳未満であった参加者でより強く、週5回以上使用の多変量調整死亡ハザード比は0.74であった。ただし歯磨き回数の場合と異なり(昨年度解析を実施)、歯間部清掃用具の使用と虚血性心疾患や脳卒中の死亡・罹患リスクとの関係については有意な関連がみられなかった。したがって死因の検討などにより、歯間部清掃用具の使用がどのような疾患のリスク低下と関連しているか、さらに検討が必要と考えられた。
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