研究実績の概要 |
慢性腎臓病 (CKD) は心血管疾患(CVD)のリスクが高いことがこれまでの疫学研究で示されている。微量アルブミン尿は糖尿病性腎症以外でも早期腎臓障害の指標に有用である可能性がある。CKDが動脈硬化に及ぼす影響や機序を明らかにするためには、微量アルブミン尿が動脈硬化に及ぼす影響を検討する必要がある。本申請課題では、日本人地域住民1500人からなる潜在性動脈硬化症の前向きコホートにおいて、微量アルブミン尿が潜在性動脈硬化に及ぼす影響、また、微量アルブミン尿を呈する背景要因について解明する。 平成26年度は微量アルブミン尿を呈する背景要因や、潜在性動脈硬化症との関連の検討をさらにすすめた。日本腎臓学会、KDIGOのガイドラインに基づき、eGFRと尿アルブミン定量によるCKD重症度分類別に頚動脈の動脈硬化所見、脈波伝播速度等を検討した。結果、eGFR と尿中アルブミンを組み合わせたCKDの重症度区分が高いほど潜在性動脈硬化所見が重症であった。eGFRが正常範囲レベルであっても、微量アルブミン尿(30~300mg/gCr)を呈する段階ですでに動脈硬化は進行しており、微量アルブミンはeGFRと独立して潜在性動脈硬化所見と関連することが明らかであった。 微量アルブミン尿は年齢、BMI、血糖(またはHbA1c)、TC、TG、HDL、クレアチニン(またはeGFR)、血圧と相関を認めたが、回帰分析で統計的に有意な関連を認めたのは、年齢、血糖(またはHbA1c)、クレアチニン(またはeGFR)、血圧であった。非糖尿病者においても微量アルブミン尿を15%に認め、血圧レベル別にみた微量アルブミン尿を呈する割合は正常血圧、正常高値血圧、Ⅰ度高血圧それぞれ、3.5%,7.1%,14.6%であった。一方、尿蛋白陽性率は2.1%,0%,2.3%であった。よって、尿中アルブミンは糖尿病以外においてもより鋭敏な臓器障害の指標となる可能性が示唆された。
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