研究課題
平成25年度は、社会人口統計体系市町村基礎データやGISを用いてコホート対象地域の地域情報のデータベース化された地域要因の中から、特に地域の社会経済的状況(剥奪指標、失業率、大学進学者割合など)と死亡、疾患別死亡、がん/循環器疾患罹患の関連に関する縦断的検証を実施した。また、地域環境に関する特徴(居住安定性、地域の規範等)と健康行動との関連に関する研究報告をまとめた。その結果、市町村ならびに近隣居住地区の社会経済状況はそこに居住する個人の総死亡リスクならびに自殺死亡リスクと関連することが示された。すなわち、社会経済状況が悪い地域に居住する人の死亡リスクは裕福な地域に居住する人と比較して有意に高く、その傾向は個人の社会経済状況を考慮しても変わらなかった。また、脳血管疾患罹患においても同様の関連が見られたが、この研究では個人の社会経済状況の要因を十分に調整できておらず、認められた影響を文脈効果と構成効果に分離することはできなかった。そのほか、地域の居住安定性と喫煙に対する社会規範が個人のさまざまな要因の影響を越えてその地域に居住する個人の喫煙行動と関連することが示された。つまり、人の移動の激しい居住地として不安定な地域的特徴ならびに喫煙に対して寛容な社会規範がそこに居住する人の喫煙を促進する傾向が見られた。本研究の結果、日本においても欧米と同様に地域環境要因が個人レベルの要因の影響を超えてそこに居住する個人の健康に対し有意な影響があることが示された。また、これらの地域環境要因の健康影響は個人レベルの要因によって変化する可能性も示された。本研究の結果、個人に対するアプローチに加えて市町村・近隣居住地区レベルの地域・環境に対する公衆衛生・予防医学的な新たな公衆衛生対策の可能性が示唆された。
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