研究課題/領域番号 |
23590795
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
斉藤 功 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90253781)
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研究分担者 |
加藤 匡宏 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (60325363)
山内 加奈子 愛媛大学, 教育学部, 研究員 (20510283)
谷川 武 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80227214)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 疫学 / 循環器疾患 / 評価指標 / ヘルスプロモーション |
研究概要 |
本研究は、循環器疾患(脳卒中・心筋梗塞)対策を目的とするヘルスプロモーションの評価指標として、疾病の発症率の情報は極めて重要であるにも関わらず、わが国においてその情報は非常に限られている。また、衛生統計の指標としてよく用いられる人口動態統計は、悉皆性という点では精度は高いものの、一次予防の指標として有用かどうか明らかではない。今年度は、愛媛県O市(人口約5万人)での循環器疾患発症調査から、1999年~2011年までの心筋梗塞と脳血管疾患の発症率の推移、ならびに、1999年~2008年までの虚血性心疾患、脳卒中(国際疾病分類[ICD-10]:虚血性心疾患[I20-I25]、脳血管疾患[I60-I69])の死亡率の推移を比較検討した(40歳以上)。心筋梗塞と脳血管疾患の発症は、WHOモニカ基準に基づき市内主要病院において把握した。率の傾向性の検定は、ポアソン回帰分析を用い、年齢調整済みの年間変化率を算出した。結果、虚血性心疾患発症率の年間変化率は、男性が-4.97%(95%信頼区間:-9.89~0.21)、女性が-5.41%(-11.25~0.81)であった。死亡率の変化率は、それぞれ-9.74%(-13.76~-4.96)、-7.73%(-12.29~-2.94)であった。一方、脳血管疾患発症率の年間変化率は、男性が-5.29%(-7.98~-2.51)、女性が-4.81%(-7.81~-1.72)、死亡率は、それぞれ-10.64%(-13.65~-7.53)、-7.35%(-10.28~-4.31)であった。最近10年間の循環器疾患発症率、死亡率の動向はいずれも減少しており、罹患率よりも死亡率の減少割合が大きかった。罹患率と死亡率は同様の傾向であったが、発症登録や人口動態統計の精度を考慮に入れ、死亡率の動向が発症率の動向を反映しているのかどうか詳細に検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り基幹病院を中心とする脳卒中・虚血性心疾患発症数の把握から、死亡率と発症率の動向を示すことができた。今年度は、当該地域における調査方法と分析方法の確立を行うことができ、おおむね順調に進展していると考えている。また、人口動態統計の原死因の精度の妥当性を確保するために、循環器疾患関連死亡例についての医療情報が必要であり、該当する事例について死亡小票に記載されている医療機関へ遡り、診断の確定を行う必要があるが、本件に関しては、人口動態統計の目的外使用の申請等の準備が遅れており、次年度、申請許可を得た後に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画の通り、愛媛県O市において、循環器疾患対策に向けた包括的な保健事業評価につなげるための方法論の構築とマニュアルの作成を行うことを目的として、これまで当域で行ってきた事業を継続し、2010年~2012年における40歳以上の脳卒中・心筋梗塞の発症者数を医療機関の調査から把握する。また、2006年~2010年までの発症者については、人口動態統計から得られた原死因情報より医療機関へ遡り、診断の確定を行う。そして、病院調査から把握された発症者数と突合することにより感度分析を行い把握率の指標を算出する。病院での発症者については人口動態統計を参照することにより予後の指標を把握する。1996年~98年に設定したコホートのエンドポイントを2010年まで延長し、既知の危険因子に関して相対危険度、並びに集団寄与割合を算出する。当地域における1999年~2012年までの危険因子の動向とあわせ保健事業評価を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり、採録調査のためにトレーニングを受けた看護師一人を雇用して行う。調査件数は、年間およそ脳卒中・心筋梗塞発症者数が約200件、また、原死因からの遡り調査では約300件が該当することが予測され、合計500件の調査が必要である。したがって、1日10件として、50日間分の費用を計上する必要が生じた。その他、データ分析のための統計ソフト解析、データのバックアップ用のハードディスク、その他旅費として、各種研修会(医学統計の研修会を含む)および関連会議(主に東京)に参加するための費用および学会発表(海外での成果発表を含む)の参加費用をそれぞれ計上する。また、年1回、保健センターや地域医師会との連絡調整会議を開催し、本研究の調査結果等の報告を行うための会議費用を計上する。
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