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2011 年度 実施状況報告書

久山町一般住民における生活習慣等の胃癌発症に及ぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 23590797
研究機関九州大学

研究代表者

池田 文恵  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596825)

研究分担者 清原 裕  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード疫学 / 胃癌 / コホート研究 / 久山町研究
研究概要

平成23年度は、白血球レベルと胃癌発症との関係について検討した。昭和63年の久山町における生活習慣病予防健診を受診した40歳以上の久山町住民2,742名(久山町第3集団、受診率80.9%)のうち、胃癌の既往もしくは胃切除歴のある者、白血球数が未測定であった者、追跡開始までに死亡した者を除いた2,558名を19年間追跡した。追跡期間中に128名の胃癌発症を認めた。初めに対象者を追跡開始時の白血球数の4分位値(≦4.4、4.5-5.2、5.3-6.3、≧6.4×1000/μl)で4群に分け、胃癌の罹患率(対1,000人年)を検討したところ、年齢・性調整後の胃癌罹患率はそれぞれ1.7、2.6、3.9、5.4と白血球レベルの上昇とともに直線的に増加した(p for trend <0.01)。年齢、性、H.pylori感染、血清総コレステロール、喫煙、食事性因子で調整後も、白血球レベルの最も高い群は最も低い群と比較して2.22倍、胃癌発症のリスクが高かった。H.pylori感染の有無別にみると、H.pylori抗体陽性者では、白血球レベルの最も高い群は他の残りの3群と比較して有意に胃癌発症のリスクが高かったが、H.pylori抗体陰性者ではこのような関連はみられなかった。しかし、H.pylori感染の有無によって白血球レベルと胃癌発症の関係の強さに有意な違いは認めなかった(異質性p=0.65)。以上より、白血球レベル高値は、特にH.pylori感染者において胃癌発症の危険因子であることが示唆された。 さらに本研究では、上述の久山町第3集団および平成14年に設定された第4集団の追跡調査を本年度も継続した。この追跡調査では、健診、健診未受診者および転出者に対するアンケート調査、久山町周辺の基幹病院への定期的な訪問による診療記録や画像診断等の臨床情報の収集、剖検による死因の同定を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画どおり、福岡県久山町で生活習慣病予防健診を行ない、胃癌発症例の情報の収集、データ整備が行えている。また、一部解析も進んでおり、おおむね順調に進展していると考える。しかし、更なる詳細な検討を行うには、胃癌の発症数が不十分であるため、引き続き調査が必要である。

今後の研究の推進方策

生活習慣病予防健診、および胃癌発症の追跡調査を継続し、臨床情報からのデータ整備を続行する。これにより、追跡期間をさらに延長して胃癌の発症数を増やすことで、追跡対象者の栄養摂取状況や食事パターン、身体活動度、血液検査データ(炎症性マーカーや脂肪酸レベル、インスリン値など)が胃癌発症の危険因子もしくは予防因子となり得るか詳細な検討を行うことが可能になると思われる。また、追跡開始時の血清ペプシノゲンレベルとその後の胃癌発症率との関係や、胃癌発症の予測に最適な血清ペプシノゲンレベルがどの程度であるか、さらには、追跡開始時の対象者の臨床的背景や環境因子を分析し、将来の胃癌発症予測のためのリスクスコアを検討することが可能になると思われる。

次年度の研究費の使用計画

1)胃癌の発症情報を得るため、引き続き追跡調査を行う。その一環として、平成24年度も生活習慣病予防健診を行い、臨床情報を得る。生活習慣病予防健診では、医師や訓練されたスタッフによる問診(悪性腫瘍、心血管病を含めた生活習慣病の発症に関する情報やその他の疾患の既往歴、家族歴、飲酒・喫煙・運動習慣などの生活習慣)、医師による診察、身体計測(身長、体重、皮脂厚比、腹囲/腰囲、体脂肪率)、血圧測定、心電図、胸部エックス線検査、眼底撮影、骨密度、血液検査(血計、血液生化学、HbA1cなど)、検尿、75g経口糖負荷試験、栄養調査を行う。前年度までと同様に未受診者、転出者へのアンケートの郵送や、久山町周辺の基幹病院への定期的な訪問を行い、胃癌発症に関する情報を収集し、発症情報の漏れがないよう努める。また、死亡例については、病理解剖の承諾を得るよう努力し、死因を精査する。また、潜在的な胃癌の発見に努める。2)平成23年度に引き続き得られたデータを基にして、胃癌発症のデータベースを整備し、胃癌発症の予後予測因子となり得る危険因子についての解析を継続する。特に栄養摂取状況、食事パターンや運動習慣が胃癌発症に与える影響や胃癌のリスクスコアに関する解析をH.pylori感染の有無を考慮に入れて更に検討する。以上の解析には、九州大学大型電算機センターのSAS解析システムを用い、Cox比例ハザードモデルやROC曲線などで検討を行う。3)研究成果は、国内学会で報告するとともに、英文誌に投稿する。また、久山町住民のみならず、わが国国民に対して、所属教室発行の定期刊行物、ホームページや新聞・雑誌等のマスメディアおよび公開講座を通じて、情報を発信する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] White blood cell count and risk of gastric cancer incidence in a general Japanese population: the Hisayama Study.2012

    • 著者名/発表者名
      Iida M, Ikeda F(2番目), et al.
    • 雑誌名

      Am J Epidemiol

      巻: 175 ページ: 504-510

    • DOI

      10.1093/aje/kwr345

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Body mass index and stroke incidence in a Japanese community: the Hisayama Study.2011

    • 著者名/発表者名
      Yonemoto K, Ikeda F(6番目), et al.
    • 雑誌名

      Hypertens Res

      巻: 34 ページ: 274ー279

    • DOI

      10.1038/hr.2010.220

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combined effects of smoking and hypercholesterolemia on the risk of stroke and coronary heart disease in Japanese: the Hisayama Study.2011

    • 著者名/発表者名
      Hata J, Ikeda F(5番目), et al.
    • 雑誌名

      Cerebrovasc Dis

      巻: 31 ページ: 477-484

    • DOI

      10.1159/000324392

    • 査読あり
  • [雑誌論文] N-Terminal Pro-Brain Natriuretic Peptide and Risk of Cardiovascular Events in a Japanese Community: the Hisayama Study.2011

    • 著者名/発表者名
      Doi Y, Ikeda F(6番目), et al.
    • 雑誌名

      Arterioscler Thromb Vasc Biol

      巻: 31 ページ: 2997-3003

    • DOI

      10.1161/ATVBAHA.111.223669

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本人における胃癌発症予測モデルの作成:久山町研究2011

    • 著者名/発表者名
      飯田真大、池田文恵(2番目)ら
    • 学会等名
      第53回日本消化器病学会大会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      2011年10月20日
  • [備考]

    • URL

      http://www.envmed.med.kyushu-u.ac.jp/

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公開日: 2013-07-10  

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