研究課題/領域番号 |
23590803
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
江下 優樹 大分大学, 医学部, 准教授 (10082223)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 媒介蚊 / チクングニア熱 / RT-LAMP / ウイルスゲノム / 遺伝子検出 |
研究概要 |
節足動物によって媒介される一連のウイルスを節足動物媒介性ウイルス(略名:アルボウイルス)と称している。デング熱・チクングニア熱等のアルボウイルスに起因する疾病は、東南アジア諸国に蔓延している。デング熱と比較してチクングニア熱が軽症であったことから研究はほとんどなされていなかった。しかし、マダガスカル島に近いレウニオン島で強毒性のチクングニアウイルスが分離されて以来、本ウイルス株が東南アジアに急速に拡大し、重篤な症例が報告されるに至っている。本ウイルス株に対して高い感受性を持つ主媒介蚊のヒトスジシマカは、日本国内にも生息しており、本ウイルスの国内移入が懸念されている。我国でチクングニア熱の一次患者発生の際に、またさらに二次患者の国内発生を阻止するために、感染蚊の早期発見システムを構築することが本研究の目的である。そのためには、病原体検出の簡便な方法の確立と国内産蚊の本ウイルス感受性を比較検討すること、および本病原体が国内に侵入した際に、国内に生息する媒介蚊種のリスク評価を行うことを計画した。平成23年度は、RT-LAMP法を用いて感染蚊からのチクングニアウイルスゲノムの検出を検討した。さらに、感染蚊からRNAを精製することなく、ウイルスゲノムを検出する簡便な方法を検討した。ウイルスゲノム検出の簡便化は、実験室内での実施のみならず、設備の整っていない野外の簡易検査室でも容易に利用できることになる。また、本ウイルスを媒介する蚊種については、九州産ヒトスジシマカに対するチクングニアウイルスの感受性を検討した。その結果、タイ産のネッタイシマカと同等のウイルスゲノムが検出された。二次患者発生を阻止するために駆除の標的蚊として少なくともヒトスジシマカがリスク評価の対象蚊となりうることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、RT-LAMP法を用いて感染蚊からのチクングニアウイルスゲノムの検出を行った。さらに、感染蚊からRNA精製することなく、ウイルスゲノムを検出する方法を確立した。今後さらに簡便化をすすめる予定である。本項目は2年度以降に主に研究を予定していた項目でるが前倒しで試験を行った。また、九州産のヒトスジシマカに対するチクングニアウイルスの感受性を検討した。その結果、タイ産のネッタイシマカと同等のウイルスが検出されたことから、国内産のヒトスジシマカが駆除の対象となることを実証した。これらの結果から、おおむね研究は順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
国内での感染蚊対策を実地で検討するために、デング熱熱流行地であるタイ国において、野外採集の感染蚊を用いた簡便RT-LAMP法の評価を計画している。同様に実験室内ではさらなる簡便化の検討を行う予定である。また、ヒトスジシマカと同じ蚊群でるヒトスジシマカ群の蚊種を用いて、チクングニアウイルス感受性を検討する予定である。その目的で、奄美・琉球列島に普通に生息している蚊を採集するために、奄美大島を訪問する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
タイで実施予定の野外蚊からのチクングニアウイルス感染蚊の検出は、バンコク近郊では採集が困難であることから、それに代えてデングウイルスとその媒介蚊を用いて、流行地で簡易RT-LAMP法を実施・検討する。その際に、試薬や消耗品類の購入が必要となる。また、奄美大島に生息するヒトスジシマカ群の蚊採集に際して、旅費が必要であることから、次年度の旅費に充てるために、若干ではあるが次年度使用額とした。
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