研究課題/領域番号 |
23590806
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 貞夫 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20226509)
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キーワード | 疫学 / 委縮性胃炎 / ペプシノーゲン / 肥満 / 生活習慣病 |
研究概要 |
慢性萎縮性胃炎(chronic atrophic gastritis;CAG)は,ピロリ菌感染を主な原因とし,胃がんの危険因子であるため,予防のためにピロリ菌の除菌が行われている.しかし,実際にCAGから胃がんに進展する割合はわずかである.一方,CAGは胃の機能低下,食思不振などを起こすことがあり,有病者が摂取・吸収するカロリーは非有病者に比べ少ないことが考えられる.これは,メタボリックシンドローム(MetS)をはじめとする生活習慣病を予防する方向に働いている可能性があるが,このような観点からは公衆衛生的評価はされていない.この研究では,現在進行中のコーホート集団を使用して,CAG関連の疫学を,横断的,経時的に検討することを目的とする. この研究の母体である「岡崎研究」は,平成19年2月に開始し,ベースライン調査(調査票,ペプシノーゲン値をはじめとした血液,尿データを収集)終了の平成23年度までに約7500名の登録を完了した.データベースについては,登録者が確定した時点での結果をもって最終結果とした.平成24年度中に全登録者のペプシノーゲンを測定し,岡崎研究の全対象者のCAG有病状態を把握した.そのほかのベースライン情報についてもおおむね入力は完了しているが,ピロリ菌など一部のデータの最終決定については,平成25年度に回すものとする. 一方,登録者の追跡について,検診を実施している岡崎市医師会公衆衛生センターとの話し合いにより,平成24年度の終盤にシステムの構築が完了し,再受診者についてはアクセスが可能となった.現在までの追跡者数は100名程度である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の対象者数は7500名を超え,当初の目標をほぼ達成したと考えられる.また,必要データについても,問診,検診データについてはほぼ入力も完了し,データベースの完成までもう一歩のところまで到達している.追跡調査も,岡崎市医師会公衆衛生センターとの話し合いにより,再受診者についてのアクセスが可能となり,一部とはいえ,縦断研究が行えるシステムが構築された.最終年に向けて,当初の目標は達成できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成23年度までに収集したベースラインに,平成24年度以降の追跡情報を付加し,データベースの最終確定のために,データの入力とクリーニングを行う. CAGに関する記述疫学研究と CAGと生活習慣,肥満,MetS,糖尿病,脂肪肝,インスリン抵抗性異常などのベースライン情報との関連についての横断研究を完成させる. 再受診した少数例については,経時的な縦断研究を行う.ベースラインからの期間を5年としているので,1500名程度の規模を目標とする.肥満,MetS,糖尿病,脂肪肝,インスリン抵抗性異常などの新規発生に関するCAG有病別の追跡研究をできる範囲で行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の前半は,縦断調査のシステム構築に費やしたため,データ取得やデータベース作成にまつわる研究費が発生しなかった.その分を平成25年度に繰り越して使用する. 基本的には,データベース構築のための人件費,縦断データ取得のための交通費,人件費,関連する血液データの測定のための測定費,連絡のための通信費などが主な研究費の使途となる.
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