研究課題/領域番号 |
23590808
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
繁田 正子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70215961)
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研究分担者 |
渡辺 能行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00191809)
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キーワード | 受動喫煙 / 社会的認知理論 / PM2.5 |
研究概要 |
受動喫煙に関する意識調査について、より簡便で汎用性が高いものを採用することを決定し、その内容を包含している、京都府民の喫煙に関する意識調査(4000例対象)と京都市民に対する意識調査(4000例対象)を、本研究に使用することの許諾を得て、解析にうつった。また、京都府下の看護学生に対しても、同様の調査を行うことが可能となったため、同じく4000人に対して京都府看護協会と連携のもと、2012年12月~2013年1月にアンケート調査を行った。こちらについては、現在入力作業中である。 現在までの結果としては、年齢や地域に影響を受けず、また喫煙しているしていないにもそれほど大きな影響を受けずに府民市民の受動喫煙への知識はそれなり醸成されていることがわかった。ただし、その重大度や自分に対して影響があるのでは、という脆弱性に関しては十分な量の問いはできなかったので、知識の深さや幅広さに関しては不足している可能性がある。 その事実は、各地で京都禁煙推進研究会や行政機関と共同で行ったセミナーなどからも伺えるため、本研究のもうひとつの柱であるPM2.5測定についてのデータをフライヤーとして印刷し、地域職域で配布し、意識の向上を促した。中国からの大気汚染の影響が平成25年3月かなり大きく報道され、我々のデータもあちこちで引用された。急ぎ、論文化を進めているところである。 PM2.5については、ホテルのロビーを集中的に測定したが、日中に限定したため、喫煙者がほとんどいないところが多く、データとしては、あまり使用できなかった。散発的に行った、議会棟や職場の喫煙所では300~500mg/m3を記録しており、実際に喫煙者が集中している喫煙コーナー等を測定していく必要があると考えている。そのためには企業等の協力も必要なので、現在調整に入っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健康教育理論に応じたアンケート用紙の作成に関しては、学問的に理想を追求して細かく何もかもいれると、一般には使用しにくいものにならざるを得ないことがわかった。内容の濃さと、使用の利便性はトレードオフの関係にあることは明らかであり、今回まず広く全体の現状を知ることを優先すべきと判断し、もっとも最初に作ったシンプルな調査表(それを京都市や京都府の調査にも用いた)を採用することにしたため、データが十分広く母数を反映した形で収集することができた。この他に、公務員集団、製造業会社員の集団のアンケート調査も行ったので、比較検討などもできると考えている。 クロス集計が済み、これから因子分析にうつるところである。ちょうど、類似の形式を取り入れた看護学生アンケート調査も実施することが可能だったため、こちらの集計を待って、一般住民と若年者の意識の差なども明らかにするような解析ができる状態である。 PM2.5の測定も着々と進んだが、予想以上に喫煙率が低下していて大規模ホテルなどでは喫煙室があっても、ほとんど吸っている人がいないという予想外の部分もあった。それはそれで、社会全体のよい方向性ではあるが、明らかにタバコ煙が多い場所にどのようにアプローチすべきかは、少し違う関係部署との調整を要するかもしれない。ただ、これについても、いくつかの職域から測定希望がきているので、うまく研究として成立するような工夫をして、最終データを増やしていきたい。 受動喫煙対策推進キャンペーンとしては、世界禁煙デーに京都禁煙推進研究会主催のシンポジウムを開催し、300人を超える府民市民に趣旨を伝えることができ、情報提供も進んでいる。京都府のがん対策基本計画にも、受動喫煙対策の一層の推進が掲げられ、最終目的である対策推進も、進展を示していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在最終的に対象として調査した看護学生のデータが入力進めているところなので、それが完成する6月をもって、最終解析にうつる予定である。これまでの個別のデータについては、8月に行われるアジア太平洋タバコ対策学会等で、内外の研究者から意見をもらい解析の方法等吟味を深めて年度内にまとめていく予定である。 PM2.5の数字については、受動喫煙問題は、実は能動喫煙問題あってであり、喫煙室の劣悪な環境などを示す方向性も意識し、職域中心に測定範囲を広げていきたい。同時並行でこれまでに取得しているカフェやファストフード店のデータを論文化し、社会全体への情報提供を科学的に行っていきたい。 上記を踏まえたタバコ対策推進キャンペーンについては、京都府下で行われている100校を超えるタバコフリーキャラバン授業を通じて、着々と推進していく予定である。それらの効果については、2010年度に取得している中学生の喫煙に関する意識調査とほぼ同様のものを2013年に実施する予定となっており、それを用いた縦断的研究が可能になる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
測定やデータ入力に人手がかなり必要であり、そのための謝金が相応に発生する予定である。特に、最終介入効果をみる中学生アンケートは4000枚あまり集まる予定である、キャンペーンに用いるフライヤーの印刷や、視覚教材の充実などで、物品費も発生するが、大きな器具等は不要なので、少額のものがいろいろかかるという状態を予想している。 さらに、関東地域で行われる学会発表が予定されており旅費も発生すると思われる。最後に、PM2.5に関する論文を欧文雑誌に投稿すべく準備中であり、その英文校正等に経費がかかる予定である。
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