研究課題/領域番号 |
23590810
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
丹野 高三 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (20327026)
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キーワード | 社会医学 / 循環器・高血圧 / コホート / 医療費 |
研究概要 |
【目的】本研究の目的は、健診受診者26469人を対象とした岩手県北地域コホート研究(県北コホート)のデータに医療費データを追加して、健診所見や生活習慣等のリスク要因を保有している者がどのくらい医療費を過剰に支出するのかを予測することである。本報告では平成24年度の研究実績を報告する。 【方法】本研究では市町村国保被保険者で、登録時に高血圧症、糖尿病、脂質異常症の未治療者でかつ脳卒中、心筋梗塞の既往がない75歳未満の男女7779人(平均58.3歳)を解析対象とした。推定糸球体濾過量(eGFR)はCKD-EPIの日本人修正式を用いて計算した。CKDはeGFR<60 ml/min/1.73m2または尿中アルブミンクレアチニン比≧30 mg/gと定義した。対象者の医療費データに基づき、2006年から2011年に支払われた医療費総額を期間中の加入期間で除して1人当たり1か月当たりの医療費(総医療費、外来医療費、入院医療費)を算出した。対象者をCKDの有無で2群に分けた。総医療費、外来医療費および入院医療費の90パーセンタイル値(41701円、28991円および10226円)以上を高額医療費と定義し、ロジスティック回帰分析を用いてCKD非保有者に対するCKD保有者の高額医療費リスク(オッズ比)を、性、年齢ならびに循環器疾患危険因子で調整して算出した。 【結果および考察】7779人中CKD保有者は1446人(18.8%)であった。CKD非保有者に対するCKD保有者の高額医療費リスク(95%信頼区間)は、総医療で1.23(1.02-1.48)、入院医療で1.27(1.05-1.52)であった。一方、CKDの有無と外来医療での高額医療費リスクとの間に有意な関連はみられなかった。CKD保有者はCKD非保有者に比べて、入院医療で高額医療費を支払うリスクが高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年3月11日に発生した東日本大震災・津波により岩手県沿岸地域の行政機能は不全状態に陥った。このため当初予定してた沿岸地域での医療費情報収集を断念した。しかし比較的震災被害の少なかった内陸地域で医療費データを収集することができ、75歳未満の10678人の医療費データを収集した。平成24年度はこのデータを用いて、慢性腎臓病(CKD)と医療費との関連について検討し、CKD非保有者よりCKD保有者のほうが医療費が高額であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は現時点で、後期高齢者医療制度導入以降の医療費データを収集していない。平成25年度は、岩手県後期高齢者医療広域連合と県北コホート参加者の医療費情報提供について交渉し、医療費情報提供に係る覚書を締結する。覚書締結に係る交渉は、研究者が岩手県後期高齢者医療広域連合への直接訪問ならびに電話・電子メール等によって行う。覚書締結後に、岩手県後期高齢者医療広域連合において、県北コホートデータ、後期高齢者医療保健加入データ、加入履歴データ、レセプトデータの4つのデータを岡山(連携研究者)が開発した匿名化ソフトを用いて電子的に連結する。
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次年度の研究費の使用計画 |
岩手県北地域コホート研究の追跡調査継続のため対象市町村と研究打ち合わせが必要である。大学所在地から対象市町村までは100~150km離れているため、この移動に係る費用を調査研究費として使用する。 平成24年度までの研究成果を2014年1月に仙台で行われる日本疫学会、2014年3月にサンフランシスコで行われるアメリカ心臓協会疫学部会で発表するため、これにかかる費用を学会出張旅費として使用する。 本研究では医療費情報を含む大量のデータを扱うため、データ整理ならびにデータ編集(加工)は研究補助を雇用、あるいは外部委託して行う。この雇用あるいは委託に係る費用を人件費・謝金等として使用する。
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