研究課題/領域番号 |
23590811
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
佐藤 憲一 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (30158935)
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研究分担者 |
佐藤 研 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00215782)
川上 準子 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (40438560)
星 憲司 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (20405913)
青木 空眞 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (40584462)
中川 吉則 東北大学, 大学病院, 講師 (20400351)
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キーワード | 健診 / 甲状腺機能異常 / スクリーニング / 基本的検査 / インフォマティクス |
研究概要 |
H24年度もJR仙台病院人間ドック施設でのスクリーニングを継続すると共に、2011年9月より2つ目の施設として、研究協力者の吉田と共に実施している東北公済病院人間ドックでの多数例でのスクリーニングにおいて、H24年度末までに、14名の甲状腺機能異常者(亢進症10名、低下症4名)を新規に発見した。これにより、昨年度の報告「我々の新しい手法の有用性と全国の人間ドック施設において実施されるなら年間一万人規模での甲状腺機能異常者の新規発見が可能と推測できる」は、より確実なものとなりつつある。当初確立した方法(亢進症でALP,S-Cr,TCの3項目、低下症でLDH,S-Cr,TC,RBCの4項目を用いる)の改良として、亢進症での心拍数・TCへの服薬補正・検査値時系列変化を考慮することが精度向上をもたらすことを、今年度、2つ目の施設においても明確に確認できた。 2つの施設でのスクリーニングに伴う情報をAccessデータベース化した。その結果、疑い予測率の度数分布を用いたスクリーニング精度と閾値の検討なども大きく進展すると共に、手法を改良するヒントなども得やすくなった。そこで、精度向上に向けたスクリーニングツールの改良も行った。 甲状腺機能異常症患者のサンプル数は分担者中川の努力により着実に増加しており、スクリーニングの安定性と精度の向上に向けて、今後の大きな成果が期待できる。亢進症の10%を占める破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎)とバセドウ病の鑑別もサンプル数が11名から39名に増加したことから再検討を行った所、基本的検査6項目セットにより高精度に鑑別を行える可能性が示唆された。また、薬剤性甲状腺中毒症への応用可能性も示唆された。 これらの成果は、人間ドック・甲状腺・医療情報などの学会や、研究会において発表しており、高い評価も受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた7項目中、(1) 甲状腺機能異常患者のサンプル数を増やしスクリーニングの安定性と精度の向上を図る 、(2) バセドウ病と亢進症の10%を占める破壊性甲状腺炎を基本的検査セットにより鑑別する 、(4) 検査値の時系列変化を加味したスクリーニングへの発展 、(5) 実用化に向けて新たな健診施設でのスクリーニング実施、についてはH24年度内に大きな進展があった。さらに亢進症スクリーニングでは心拍数を加えた4項目での精度向上、脂質異常症併発の低下症スクリーニングでの服薬補正による精度向上、男性テストサンプルの検査データをスケール変換して女性化するというやり方で男性データ解析の精度向上が達成された。これらについては、多数の学会・研究会での発表や論文掲載により公表した。医療情報学会からは2012.11の学会発表関連テーマで医療情報研究誌への論文投稿の依頼があり、高い評価を頂いたと考えている。 (3)4項目セットによる低下症のスクリーニングを軽度患者でも精度向上可能な拡張を目指すは(一部は時系列変化を考慮による進展あり)、(6)ホルモン検査と複数の基本的検査項目セットの強い重相関を臨床応用の指標として活用する、(7)抗甲状腺薬の服薬指導にスクリーニングで有用なSOMマップを応用してコンプライアンスの向上を目指す、については、H25年度の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
分担者中川の努力により甲状腺機能異常症患者のサンプル数が着実に増加しているので、スクリーニングの安定性と精度の向上を検証する予測計算も学生と共に進めていく。JR仙台病院人間ドックや東北公済病院人間ドックでのスクリーニングの結果に関連する大量のデータを集積したAccessデータベースは、今後、検査値データから計算で求められる諸量も求め補足して(例えば、eGFRを計算して低下症疑いの受診者の何%に腎症者が含まれるかを検討)スクリーニングの詳細解析も進める。亢進症のバセドウ病と破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎)の3者の鑑別を、今後もサンプル数を増やして追試を進めていく。H24年度のスクリーニングで新規に発見された亢進症患者の検査値時系列変化は偽陽性の多くとは異なる特徴を持つことから、時系列変化を加味した新たな予測モデルを作成してより精度の高いスクリーニング手法へ発展させたい。 これまでの研究の発展の現状を踏まえると、研究の更なる進展とそれを反映させてスクリーニング用の判定ソフトを改良することと並行して、今後は全国の健診施設でのスクリーニング実用化に向けても努力していくことが重要である。全国に広げるためには病院情報システム業者にも協力をお願いする必要もあるが、幸い、大手検査会社から我々のスクリーニング法を全国の健診施設で実施されるようサポートしたいとの申し出を受けており、協力して今後の具体的方策を検討していく。 また、甲状腺機能異常症の見逃し・誤診は病院でもある程度起きているといわれるので、我々のスクリーニングは病院を訪れた人を対象としても行うことが必要で今後の大きな課題である。そこで、協力研究者である吉田と共にH25年度内には候補の病院との調整を進め、スクリーニングを年度内かH26年度から始められるように、準備を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は論文投稿費がほとんど必要なく、発表のための旅費を節約したので27万ほどの余剰がでた。当初の予定には入れてないが、H25年度もJR仙台病院人間ドックおよび東北公済病院人間ドックでのスクリーニングを継続して、手法の更なる改善や機能異常症患者の更なる特徴把握を続ける計画を設定した。そこで、この余剰分は消耗品費としてスクリーニングで疑われた受診者の甲状腺ホルモン測定の検査料支払いを予定している。偽陰性の防止に向けて、基本的検査セットからの疑いが強くない受診者でもホルモン測定を行いチェックする必要がある。 H25年度は最終年度であり、旅費の支出により、代表者・分担者は学会・研究会等に参加して本研究の成果を発表する他、本手法を実用に向けて広める啓蒙のための講演活動にもつなげたい。その他の支出として、成果の論文掲載関連に使用する。
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