研究課題/領域番号 |
23590816
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小林 寅吉 東邦大学, 看護学部, 教授 (10533028)
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研究分担者 |
金子 明寛 東海大学, 医学部, 教授 (30185920)
金山 明子 東邦大学, 看護学部, 助教 (90536195)
長谷川 美幸 東邦大学, 看護学部, 非常勤研究生 (30598446)
小早川 信一郎 東邦大学, 医学部, 准教授 (90366469)
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キーワード | 感染症 / 医療・福祉 / 衛生 / 微生物 / 環境 |
研究概要 |
温水洗浄便座装置は、一般家庭だけでなく公共施設や病院にまで普及している。便座内のノズルおよび周囲は排泄物および肛門洗浄後の液に含まれる細菌により汚染される懸念があり、病院においては易感染患者が使用するため、日和見感染の原因となる可能性がある。今回は、温水洗浄装置のノズルと座面の細菌汚染の実態を調査した。 2012年1月から3月に大学病院の全病棟のトイレの温水洗浄装置292台を対象とし、滅菌綿棒を用いてノズルの温水噴出部および座面後部を拭い試料を採取した。試料を寒天培地に塗布し培養後、発育菌を同定し、抗菌薬耐性菌の検出を行った。 温水洗浄装置292台のうち、258台(88%)のノズルおよび座面の両方またはいずれかより黄色ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌群、その他グラム陰性桿菌などが1台あたり1から6菌種検出された。黄色ブドウ球菌は1台のノズルと9台の座面から検出され、うち各1台からの検出株はMRSAであった。腸球菌は87台のノズルおよび座面から検出されたがバンコマイシン耐性株は認められなかった。大腸菌群の大腸菌、エンテロバクター属菌、クレブシエラ属菌およびサイトロバクター属菌がそれぞれ38台(13%)、22台(7.5%)、13台(4.5%)および4台(1.4%)より検出され、このうちノズルから検出された大腸菌およびサイトロバクター属の各1株はESBL産生株であった。その他緑膿菌およびアシネトバクター属菌が各6台(2.1%)および8台(2.7%)より検出されたが、多剤耐性株およびメタロβ-lactamase産生株ではなかった。以上の検出率は黄色ブドウ球菌を除き、座面よりノズルからのほうが高い傾向にあった。 これらの成績より、病院の温水洗浄便座に抗菌薬耐性菌を含む日和見感染の原因菌が存在し、病院等に入院している易感染患者における本装置の使用や洗浄方法について検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年および24年度の2年間で、予定の試料採取および菌株の同定、抗菌薬感受性を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、菌株の遺伝学的解析を行うとともに、学会において研究成果の中間報告を行う。 平成26年度は、研究成果の最終報告を行い、論文投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
米国微生物学会(2013年5月)および日本環境感染学会(2014年2月)における発表を予定しているため、ポスター印刷、旅費、学会参加費に研究費を使用する。 複数装置から検出された同一菌種の疫学的解析を行うため、遺伝子解析用試薬および消耗品の購入に研究費を使用する。
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