研究課題/領域番号 |
23590820
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
鈴木 康司 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (60288470)
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研究分担者 |
市野 直浩 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (50278280)
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キーワード | 慢性腎臓病 / 酸化ストレス / アディポカイン |
研究概要 |
慢性腎臓病の発症に関与する要因として肥満やメタボリックシンドロームがあり、その関連については酸化ストレスや脂肪細胞から分泌されるアディポカインの分泌異常の関与が示唆されている。昨年度実施した住民健診受診者に対する、食習慣、喫煙・飲酒習慣等の生活習慣のアンケート調査、血清採取および頸動脈エコー検査を同様に実施した。頸動脈エコー検査では頸動脈壁肥厚、石灰化、血管の硬さの指標であるstiffness parameter(β値)を測定した。住民検診を受診した者のうち、研究同意の得られた者を解析対象者として、収集したデータと住民健診受診結果を結合しデータベースの作成を行った。対象者の血清を用いてチオール類、miRNA等の測定を行い、昨年度の血清を利用し腎機能マーカーであるシスタチンCの測定を行った。さらに昨年度と今年度の健診を両方とも受診している者を対象として、血清高分子量アディポネクチン、レジスチンの測定を行った。昨年度のデータファイルの解析により、血清カロテノイド値とアルブミン尿との関連を調査した結果、女性ではアルブミン尿群では、正常群に比べ、β-カロテンやプロビタミンA値が有意に低く、男性ではキサントフィル値が低い結果を得た。血清レジスチン値および高分子量アディポネクチン値はeGFRと有意な負相関を示した。血清高分子量アディポネクチンは他の報告等から腎機能低下により代償的に増加していると推察される。血清レジスチン値とホモシステイン値はアルブミン尿群で正常群に比べ、有意に高い結果を得た。さらに酸化ストレスに関与するmicroRNAであるmiR-21の血清濃度は、女性において、正常群に比べ、アルブミン尿群で有意に高い結果を得た。今後は昨年度と今年度の健診を両方受診した者を対象とした縦断的な解析も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、平成24年度は平成23年度に作成したデータセットを用いて腎機能指標と酸化ストレスおよびアディポカインとの関連について解析し、結果を学会等で発表を行うことができた。さらに昨年度も受診している者を対象として、昨年度に測定した血清項目である高分子量アディポネクチンおよびレジスチンの測定を行った。2年連続で受受診する者の割合が当初の予定より若干少なかったが、295名の受診者の血清を用いて測定することができた。このデータファイルを利用して、今後縦断的な調査も行う予定である。血清カロテノイド値とアルブミン尿の関連については、尿中アルブミン・クレアチニン比と血清プロビタミンAやキサントフィル類が負相関する結果を得、この結果については現在論文にまとめ終わり投稿準備中である。昨年度測定した血清成高分子量アディポネクチン、レジスチン、ホモシステインと腎機能との関連についてもほぼ解析を終了することができた。食事調査については栄養摂取量の算出ができず断念したが、酸化ストレスや内皮細胞由来などの血清microRNAの測定を行うことができた。miRNAは遺伝子発現を抑制する作用を持つ21~25塩基程度のnon-cording RNAであり、癌などの様々な疾患との関連が報告されている。腎機能とこれらのmiRNAについて解析をすすめ、酸化ストレスと関与するmiR-21の血清濃度がアルブミン尿群では、正常群と比べ有意に高い結果を得た。miRNAについては、心腎連関に関連することも予想されるので、今後さらに解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
血清成分については予定していたものを測定することができた。引き続き平成23年度のデータセットによる解析を続け、血清miRNA-21と腎機能との関連について論文化を行うとともに1年間の血清酸化ストレスマーカーおよびアディポカインの変化が腎機能に与える影響について解析を行う。得られた知見は、横断調査で得られた結果や他の関連研究結果を参考に考察し、関連学会で発表、論文化し学術雑誌へ投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は血清miRNA値、動脈硬化、脂肪肝等と腎機能との関連について、研究代表者および分担者が国際学会(13th Asia-Pacific Federation for Clinical Biochemistry and Laboratory Medicine Congress)で発表を予定している。そのための学会参加費、旅費としての支出が主なものになる。また住民健診への参加も予定しているのでそのための旅費として支出する。研究成果発表のための学会参加費および英文校正、論文投稿料としての支出を予定している。
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