研究課題/領域番号 |
23590821
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
林 櫻松 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (50340302)
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研究分担者 |
杉山 佳子(中山佳子) 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (20600498)
菊地 正悟 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40224901)
上田 純子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90454339)
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キーワード | ピロリ菌 / ペプシノーゲン / 感染率 / 胃粘膜 / 中学生 |
研究概要 |
今年度は、長野県と北海道の中学生189人を対象に血清抗H.pylori抗体やペプシノゲンを測定し、H.pylori感染率及び胃粘膜の状況を明らかにした。長野県にある2校の中学校及び北海道にある1校の中学校で学校健診を受けた中学生のうち、調査参加に同意し、かつ血清IgG抗体測定ができた者189人について、血清抗H.pylori IgG抗体を測定した。測定値は10U/mL以上を陽性とした。全体では、189人のうち、抗体陽性者は8人で、陽性率は4.2%であった。長野県の2校の中学校で95人のうち、抗体陽性者は3人で、陽性率は3.2%であった。血清ペプシノゲンI値は18.9から55.7 ng/mLまでの範囲にあり、平均値は36.5±9.7、 ペプシノゲンII値は4.3から15.4ng/mLまでの範囲にあり、平均値は8.2±2.8、ペプシノゲンI/II比は2.3から7.4までの範囲にあり、平均値は4.7±1.1であった。さらに、H.pylori抗体陽性者3人の血清ペプシノゲンI、IIの平均値はH.pylori抗体陽性者より高く、I/II比が低い傾向が見られた。H.pylori抗体陽性の場合、炎症などによる血清ペプシノゲンI、IIの上昇が示唆された。北海道の中学校で94人のうち、抗体陽性者は5人で、陽性率は5.3%であった。血清ペプシノゲンI値は19.9から71.1 ng/mLまでの範囲にあり、平均値は41.4±13.1、 ペプシノゲンII値は2.8から90.2ng/mL までの範囲にあり、平均値は10.6±10.0、ペプシノゲンI/II比は1.2から8.4までの範囲にあり、平均値は4.5±1.0であった。長野県及び北海道における疫学調査より、中学生のH.pylori感染率は3-5%であることが明らかになり、地域によるH.pyloriの感染率に大差がないことも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書にある平成24年の実施計画は、1)研究対象者の保護者から、研究目的や、残血清を用いた血清H. pylori抗体、ペプシノゲン値、炎症マーカーなどの測定についてインフォームド・コンセントを取得 2)同意が得られた研究対象者の残血清を整理、測定必要量を確認。3) ELISA法により血清H. pylori抗体、ペプシノゲン値を測定 4) 測定結果により、胃粘膜健康度が低い(ペプシノゲン値の変化が強度な)対象とそうでない対象を40例ずつ無作為抽出する、となっている。全体ではおおむね順調に進展しているが、炎症マーカーの測定と計画の4)については、実際にインオームド・コンセントの取得が困難であったため、実施できなかった。また、松本市教育委員会との交渉が不調に終わったため、平成25年度に長野県内の別地区で調査を実施することに決まった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、長野県内の4つの中学校で、本研究への参加に同意が得られた中学生から、残血清または尿検査の残検体を用いて、ピロリ菌抗体及びペプシノーゲン値の測定を予定している。測定は、検査機関に委託し、測定結果は希望者に返却する。平成25年度は、最終年度であるため、平成24年度と平成25年度のデータをまとめて分析し、学会発表や論文にまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、残血清や尿検査の残検体を用いて血清抗ピロリ抗体やペプシノーゲン値の測定を予定しているため、測定費用が必要である。また、データ整理や入力、論文投稿前の英文校閲なども研究費から支払う予定である。
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