研究課題/領域番号 |
23590825
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
倉恒 弘彦 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (50195533)
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研究分担者 |
平田 まり 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (90173244)
大川 尚子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 准教授 (70369685)
長見 まき子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 准教授 (10388663)
中富 康仁 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 総合診療担当 (90566184)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自律神経機能 / 睡眠・覚醒リズム / 酸化ストレス / 抗酸化力 / 疲労 / 抑うつ / 睡眠異常 / メンタルヘルス障害 |
研究概要 |
目的と方法:客観的なメンタルヘルス評価法の確立を目的に女子大生147名を対象に、自覚症状調査と心拍変動解析による自律神経機能の解析を行った。41名はライフ顕微鏡(日立社製)を用いた睡眠・覚醒リズム解析を実施した。また、20名の労働者に対して月に月に1度、3か月(計60回)同様の調査を実施した。さらに、宮城大学が行った東日本大震災後検診に実装者として参加し、369名の疲労客観的評価に取り組んだ。 結果と考察:女子大生145名より有効データを得た。総合疲労得点、CES-D質問紙による抑うつ得点、ピッツバーグ得点(睡眠評価)はいずれも一般健常者104名と比較して有意に高値であり、この3者には正の相関がみられた。 客観的な評価では、自律神経バランスLog(LF/HF)と主観的疲労度とに正の相関がみられたが、疲労、抑うつ、睡眠障害と自律神経機能活動との関連はみられなかった。41名に実施した睡眠・覚醒リズム解析では、客観的な睡眠効率や中途覚醒数と問診票による睡眠評価とには相関がみられず、自覚的睡眠評価と客観的睡眠評価とは必ずしも一致しないことが判明した。また、チャルダー質問紙疲労得点と覚醒時活動量に正の相関がみられ、学生の疲労は慢性疲労患者とは異なる病態であることが明らかになった。 一方、労働者調査ではLog(LF/HF)とチャルダー疲労得点に正の相関、全周波数帯心拍変動パワー値と抑うつ得点に負の相関が認められ、自律神経活動が疲労、抑うつと関連している可能性が示唆された。 東日本大震災後調査では、酸化ストレス(d-ROMs)が有意に上昇しており、酸化ストレスの増加が疲労病態と関連していることが判明した。抗酸化力(BAP)も多くの職員で上昇がみられたが、約1割では逆に顕著な低下が認められた。BAP低下は未病状態を早期に見出すサインである可能性が考えられ、疾病予防につながる知見と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度:大学生を対象とした調査:100%(研究計画書内容はすべて実施)、職員調査:70%(一部は共同研究として実施) 女子大生147名を対象に質問紙を用いた自覚症状調査を実施し、女子大生の多くに自覚的な疲労、抑うつ、睡眠障害がみられることを明らかにした。そこで、このような病態の女子大生における客観的な変化を明らかにするため、心拍変動解析による自律神経機能の解析、ライフ顕微鏡(日立社製)を用いて睡眠・覚醒リズム解析を実施したが、女子大生の訴える疲労、抑うつ、睡眠異常と自律神経機能活動とにはあまり関連がみられないことが判明した。また、ライフ顕微鏡にて睡眠・覚醒リズム解析では、客観的な睡眠効率や中途覚醒数と問診票による睡眠評価とには有意な相関がみられず、自覚的睡眠評価と客観的睡眠評価とは必ずしも一致しないことを明らかにした。ライフ顕微鏡による評価では疲労を訴える学生の活動量が高いことも判明し、学生の訴える疲労病態は慢性疲労患者とは異なるものであることが示唆された。 次に、20名の労働者に対して月に月に1度、3か月(計60回)同様の調査を実施し、Log(LF/HF)とチャルダー疲労得点に正の相関、全周波数帯心拍変動パワー値と抑うつ得点に負の相関を認めた。この結果は、自律神経機能評価が疲労、抑うつの判定につながる可能性を示唆している。 また、宮城大学が実施したプロジェクト「東日本大震災被災者と救援支援者における疲労の適正評価と疾病予防への支援」(代表:吉田俊子)において実装者として参加し、多くの被災者の疲労に酸化ストレスの増加が深く関わっていることを明らかにするとともに、一部の被災者では抗酸化力の顕著な低下が認められることを見出した。これは、未病状態を早期に発見して予防につなげることのできる新知見の可能性があり、重要な発見である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度と同様、通常の社会生活や学生生活を過ごすことができている臨床研究に協力的な大学生(新たに200名)、一般労働者(新たに200名)を対象にメンタルヘルスに関する調査票を用いてストレスの有無や本人が自覚しているメンタルヘルスの状態を評価するとともに、生活環境ストレス関連のバイオマーカーを用いて客観的な評価を実施し、本人の自覚しているメンタルヘルスの状態と上述のバイオマーカーとの関連を解析し、客観的な評価法を明らかにする
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次年度の研究費の使用計画 |
通常の社会生活や学生生活を過ごすことができている臨床研究に協力的な大学生(新たに200名)、一般労働者(新たに200名)を対象にメンタルヘルスに関する調査票を用いてストレスの有無や本人が自覚しているメンタルヘルスの状態を評価するとともに、生活環境ストレス関連のバイオマーカーを用いて客観的な評価を実施する。上記目的にて下記研究費の支出を予定する。(1)研究に協力してくれる大学生、一般労働者への謝金 30万円、(2)上記調査に必要な消耗品の購入 30万円、(3)研究成果の発表のための学会出張旅費 5万円、(4)雑費:研究資料の郵送、資料の作成など 5万円
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