研究課題/領域番号 |
23590828
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
足達 寿 久留米大学, 医学部, 教授 (40212518)
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研究分担者 |
平井 祐治 久留米大学, 医学部, 講師 (70309780)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フェチュインA / インスリン抵抗性 |
研究概要 |
近年、血中フェチュインA高値が、心筋梗塞や脳梗塞のリスク上昇に関係することが話題となっており、ホモシステイン以来の確定的な新しい動脈硬化の危険因子の可能性についての議論が盛んである。しかし、これは発症者の背景を後ろ向きに見た研究や、冠動脈疾患の多い欧米諸国からの報告が殆どで、本邦からの報告は未だない。さらに、本邦での血中フェチュインの動脈硬化性疾患への関与を詳らかにするには、悉皆性の高い検診cohortを持つ前向き疫学研究の結果を待たねばならない。そこで、我々は大規模な住民検診において、血中フェチュインAを測定し、本検診地区で特に多い脳梗塞発症との関連を前向きに検討することを本研究の主目的とした。 我々はまず、長崎県の離島(典型的な漁村)での検診で合計451名(男性176名、女性275名)に対してフェチュインAを測定し、その分布、平均値、男女差などを検討した。その結果、男女とも正規分布を示し、男性の平均は240.4μg/dl 、女性251.6μg/dlで、男性に比べ女性が有意に高値であった。さらに、フェチュインAを目的変数とした単変量解析では、女性、インスリン、HOMA-Rが有意であり、変数増大法を用いた多変量解析では、HOMA-Rが最も強い関連性を示し、フェチュインAとインスリン抵抗性が関連することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が本研究を応募する際、、血中フェチュインA高値が、心筋梗塞や脳梗塞のリスク上昇に関係することが議論される一方、フェチュインA高値である人は、抗動脈硬化作用を有することを示す報告もあり、十分なエビデンスがない状況であった。 しかし、今回、我々の離島での採血結果から、血中フェチュインA高値者は明らかにインスリン抵抗性と関連していることが立証され、この結果も基にさらに大きな集団(典型的な農村)で、血中フェチュインA高値と心筋梗塞や脳梗塞のリスク上昇との関係を明らかにする予定であり、本研究は概ね順調に経過していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2009年の大規模住民検診での貯血検体を基に、約2000名の血中フェチュインAを測定し、平成25年度までに5年間の前向き調査を行い、「血中フェチュインAの脳梗塞の危険因子としての意義」を明らかにしていく。また、離島の検診でも同様に残血があるため、さらに測定数を増やし、典型的な農村と漁村に於いて、これらの関係に明らかな相違があるか否かも検討していく考えである。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の如く、約2000名の血中フェチュインAの測定料として使用することが、第一であるが、我々は450名を対象とした検診で、フェチュインAとインスリン抵抗性の関連を明らかにしており、この結果を学会、研究会などで発表し、論文を作成するためにも使用することを考えている。
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