本研究の学術的な特徴は、まず、本邦に多人数を対象にしたフェチュインAに関する疫学的なデータが皆無であることが挙げられる。従って、大規模な悉皆性の高い疫学調査を通して基礎的なデータの集積から始める必要がある。 次に本邦に最も多い動脈硬化性疾患で、本フィールドにも多い脳梗塞との関連を調査し、その検討を行うことにより、novel risk factorとしてのフェチュインAの意義を明らかにする必要がある。 我々は、すでに宇久町検診で得られた659名の解析結果から、フェチュインAに最も関連する因子は、メタボリック症候群の有無と高LDL血症であることを突き止めている。この両因子は、周知の通り、虚血性脳梗塞の危険因子であるというが疫学的にも臨床的にも理解されており、フェチュインAと虚血性脳梗塞は我々のフィールドでも強い関連を有するであろうと想像される。しかし、これまでのところ、初めてフェチュインAを測定した年が2008年であることもあり、この659名中、虚血性脳梗塞の発症者が、10名未満で分析に値する発症者ではない。 そこで、我々は2009年に行った福岡県田主丸町での田主丸検診受診者、約2000人の凍結採血検体を解凍し、フェチュインAを採血する予定であり、さらに大きな集団でベースライン時より5年間を経過したフィールドでの虚血性脳梗塞の関連因子に、果たしてフェチュインAが関連しているのか否かを調べることを今後の検討課題としている。
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