研究課題
本研究は、研究代表者と研究分担者がこれまで行ってきた原爆被爆者における造血器腫瘍の発生リスクについての疫学的知見 (Blood, 2009、JCO, 2011)をさらに発展させ、原爆被爆者における骨髄系腫瘍とリンパ系腫瘍を含めた造血器腫瘍全体の発生リスクについて、臨床的特性を考慮にいれた新しい疫学知見をもたらすことを目的とする。白血病については、研究代表者と研究分担者が平成20年から作業を進めてきた長崎県腫瘍登中の白血病症例の新国際分類に基づいた病型亜分類による診断確定作業が終了し、さらに長崎大学内の被爆者データベースとの照合作業を行い、被爆者白血病の確定作業を現在慎重に進めている。中間解析時点では、長崎県腫瘍登中の白血病の粗発症率を、発症様式別にde novo型、骨髄異形成症候群(MDS)/骨髄増殖性腫瘍(MPN)から進展した白血病、治療関連白血病、その他、に区分して経年変化を解析したところ、MDS/MPNから進展した白血病が増加傾向であることがわかった。これらの区分中の被曝者の割合を検討中である。MDSについては、診断時データを国際予後スコアリングシステム(IPSS)に基づいて区分する作業と、白血病進展と死亡など予後情報の更新作業を、被爆者白血病の確定作業と並行して進めている。中間解析時点では、IPSS血球減少スコアは被曝距離によって差はなかったが、IPSS染色体スコアは近距離被爆者ほど中間型、予後不良型のスコアの頻度が高い傾向が認められた。しかし、IPSS 総スコアは被曝距離によって差はなかった。
3: やや遅れている
本年度は、骨髄系腫瘍の研究に重点を置いたため、骨髄系腫瘍の研究達成度はおおむね順調に進展しているが、リンパ系腫瘍についてはやや遅れているため、総合判断としてやや遅れている、と評価した。
骨髄系腫瘍の研究については、データクリーニングを慎重かつ早期に終了させて本解析を行い、成果発表を行う。リンパ系腫瘍の研究については研究分担者および長崎県腫瘍登録室との研究打ち合わせ会議の頻度を増やし、研究を推進する努力を行う。
研究分担者・研究協力者との研究打ち合わせ会議のための国内交通費、国内外学会での研究成果発表のための参加費・交通費、論文校正・投稿にかかる経費、コンピューターソフトのアップデートなどに使用する予定である。
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