研究課題/領域番号 |
23590829
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
岩永 正子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00372772)
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研究分担者 |
宮崎 泰司 長崎大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40304943)
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キーワード | がん疫学 / 造血器腫瘍 / 放射線被爆 / 原爆被爆者 / 発症リスク / 予後リスク |
研究概要 |
本研究は、研究代表者と研究分担者がこれまで行ってきた原爆被爆者における造血器腫瘍の発生リスクについての疫学的知見をさらに発展させ、原爆被爆者における骨髄系腫瘍とリンパ系腫瘍を含めた造血器腫瘍全体の発生リスクについて、臨床的特性を加味した新しい疫学知見をもたらすことを目的とする。本年度は、1) 白血病については、前年度から行ってきた長崎県腫瘍登中の白血病症例診断確定データセットと被爆者データベースとの照合作業が終了し、最終的に被爆者に発症した白血病449例を確定した。現在、被ばく距離と発症様式別白血病の発症との関連について、慎重に解析を進めている。2) 骨髄異形成症候群(MDS)については、新たに29例の追加作業と、改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)による病態再評価の追加作業を行った。その後、全ての症例において診断・予後に関わる情報を見直し、最終的に被爆者に発症したMDS140例の特定とデータ固定を終了し、被ばく距離と白血病移行割合および死亡割合との関連について解析を進めている。予備的な単変量解析では、MDSからの白血病進展割合は、近距離被爆者に発生したMDSでは39%、遠距離被爆者では28%と、近距離被爆者に発生したMDSのほうがやや多かったが、統計的有意差はなかった。ただし、MDSの予後関連因子には、年齢・病型・染色体異常の種類・血球減少の程度・国際予後スコアリングシステム(IPSS)やIPSS-Rのスコア値などが知られているため、これらの既知因子を考慮した上での被ばく距離・被爆時年齢の予後への影響については、現在詳細な多変量解析を進めている。3)リンパ系腫瘍については、MGUSと多発性骨髄腫については解析を終了しているが、今年度は被爆者に発症した成人T細胞性白血病146例の特定作業とデータ固定をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨髄系腫瘍の研究達成度は極めて順調に進展し、遅れていたリンパ系腫瘍の研究のうち成人T細胞性白血病についてもおおむね順調に進展し、総合判断として②おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
全ての研究についてデータ固定を終了しており、すでに詳細な最終統計解析を進めている。本研究課題は本年度で終了であったが、成果報告までは間に合わなかったため、研究計画を次年度まで延長し、今後は最終解析結果をもとに、論文化と学会・研究会(原爆後障害研究会と日本血液学会など)における成果報告に集中し、放射線曝露による造血器腫瘍の発生から予後にいたる長期的影響について、新たな知見を発信する事に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度末時点で国際予後スコアリングシステム(IPSS)による再評価と予後評価を終えた被爆者MDS症例111例について中間解析を行い、その結果を国内外の学会で発表してきた。研究内容は高く評価されたが、症例数不足による結果への影響が否めないため、本年度初旬に計画を拡大し、症例の追加や入力データの再調査などを行ったため、最終データ固定が遅くなり、統計解析と成果報告が年度内に終了しなかったため、未使用額が生じた。 本年度末3月初旬に、全てのデータ固定を終了し、現在詳細な最終統計解析を進めている。今後は最終解析結果をもとに、論文化と学会・研究会(原爆後障害研究会と日本血液学会など)における成果報告を積極的に行う予定である。従って次年度使用額は、論文投稿や英文校正にかかる費用、学会・研究会における成果発表にかかる国内交通費に充てる予定である。
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