研究課題/領域番号 |
23590830
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研究機関 | 中村学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
森脇 千夏 中村学園大学短期大学部, 食物栄養学科, 准教授 (90280289)
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研究分担者 |
内田 和宏 中村学園大学短期大学部, 食物栄養学科, 講師 (70301679)
八田 美恵子 中村学園大学短期大学部, その他部局等, 助手 (70413622)
西頭 東加 中村学園大学短期大学部, その他部局等, 助手 (90595654)
城田 知子 中村学園大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (80069781)
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
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キーワード | 骨粗鬆症 / 音響的骨評価値 / 久山町研究 / 栄養教育 / 栄養疫学 / 生活習慣等調査 |
研究概要 |
本研究の目的は、久山町における住民健診の結果から、骨密度と栄養摂取および食物消費構造の影響を横断的・縦断的に検討することによって、骨粗鬆症による骨折、引いては寝たきり予防のための食事性因子を解明し、具体的な栄養教育(指導)対策のための基礎資料を構築することである。 本年度の健診は、6月から11月までの30日間で、受診者は男性1,062名、女性1,418名の計2,480名であった。本年度は生活習慣病予防健診(通常健診)で音響的骨評価値を用いた骨密度測定と生活習慣等に関するアンケート調査を中心に実施した。全健診者を対象に実施した骨密度測定(音響的骨評価値;OSI)の結果、Young Adult Mean:YAM70%以下の者に対して骨密度検査に対する受診勧奨(3.7%)を行った。さらに健康増進法による骨粗鬆症検診判定区分では、YAM70%-80%の要精検と判定された者が男性47名(4.4%)、女性435名(30.7%)であった。特に、女性の要精検分布では、70歳代の42.8%、80歳代の64.7%で骨量の減少が疑われた。このことからも骨粗鬆症予防のための基礎資料としてのさらなる検討が必要であると思われたまた。 そこで平成16年の健診データをベースラインとし、10年後の平成25年度の骨密度検査値の変化量と生活習慣等の関連について縦断的に検討した。OSI変化量を従属変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行ったところ、散歩等の現在の運動習慣を有し、「骨粗鬆症を意識した食事をする」者において、有意に骨密度の低下を抑制することが明らかとなった。 以上のことから骨粗鬆症検診では、測定値が低い場合でも骨量を維持していくための「骨粗鬆症を意識した食事をする」ための情報提供を行うとともに、積極的かつ継続的な支援が必要であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、久山町における住民健診の結果から、骨密度と栄養摂取および食物消費構造の影響を横断的・縦断的に検討することによって、骨粗鬆症による骨折、引いては寝たきり予防のための食事性因子を解明し、具体的な栄養教育(指導)対策のための基礎資料を構築することである。 我々は本年度のすべての健診に参加した。本年度の健診は、40歳以上の全住民が対象の生活習慣病予防健診(通常健診)で、骨密度測定と骨密度に関する生活習慣アンケートを実施し、管理栄養士が面接を行い内容の確認、データの入力等を行った。また、調査票入力にあたっては、データの精度を高めるために入力内容のマッチング作業に多くの時間を費やし精度管理に努めた。 本年度は、生活習慣アンケートと骨密度との関連を検討することを目的とし、平成25年のデータを用いて平成16年度をベースラインとした10年後の縦断的検討を行った。その過程でコホートの10年間の追跡データ管理と精度について再確認をすることとなり時間的に遅れを生じた。また、2012年一斉健診の食事調査データについても縦断的検討を行うにはシステムの立ち上げを行っている状況である。 このようにデータの収集は順調に行われたが、学会発表および論文化については現時点ではやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1)平成16年をベースライン時の骨密度と生活習慣の差異が骨密度変化量に与える影響について縦断的に検討を行う。 2)2002年一斉健診における横断的な骨密度と食事性因子との関連および骨密度の生活習慣等との関連について論文化を図る。 3)2002年のベースライン時の結果と10年後の2012年結果から、骨密度の増減(改善・維持群と低下群)に対する栄養摂取状況ならびに食物消費構造との関連について縦断的な検討を行う。 4)超音波骨密度測定法について、久山町での標準値および骨粗鬆症境界値確立のための基礎資料を作成する。 以上のような推進方策に基づいて、精度の高い調査に務めるとともに、日本における骨粗鬆症予防の具体的な栄養教育(指導)対策のための基礎資料を構築するべく取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究計画通り、論文投稿用の費用として確保していたが、活用できなかったため使用額が満たなかった。 次年度への使用計画については以下の通りである。 1)本年度は、データ管理とその精度を高めるために、管理栄養士を現状より多く雇用し、研究代表者が論文執筆に専念できる体制を構築する。 また、食事調査の妥当性検討のために、秤量記録法による食事調査を行う。そのための管理栄養士の謝金として用いる。 2)論文投稿費用として活用する。
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