研究課題/領域番号 |
23590842
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
黒田 直人 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40161799)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 社会医学 / 病理学 / 脳・神経 / 頭部外傷 / 法病理学 |
研究概要 |
申請者が剖検業務に従事している弘前大学大学院医学研究科法医学講座における平成23年度の剖検数は146例であった.そのうち,脳病理組織標本(プレパラート標本)の作製が可能であった例(高度腐敗,白骨化,高度焼損などを除く例)は100例あり,さらに標本作製可能な頭部外傷剖検例は11例であった. 頭部外傷11例のうち,申請者が着目する「側脳室前角上衣下損傷」を認めた例は2例あり,いずれの症例においても,回転性頭部外傷を説明できる受傷機転を伴っていた.さらに,そのうちの1例はこれまで申請者が経験した中での最年少である幼児(4歳児)例であった.特にこの症例では,脳幹部白質(左右大脳脚付近)に多数の神経線維由来の球状物質(axonal retruction balls)を認め,典型的なびまん性軸索損傷を生じていたことから,前後方向に撓うように生じる,脳の回転性外傷例であることが強く示唆された.このことから,回転性脳損傷と側脳室前角上衣下損傷との関連性について,肯定的な結果が得られたと言える. 特定の病理所見が疑陽性あるいは人工産物であることを否定出来なければ,本研究の基本アイディアは維持出来ない.すなわち,頭部外傷を伴わない正常例においては「側脳室前角上位下損傷」がみられないことを,可及的多数例にわたり証明しなければならない.この観点からも,今後は症例を蓄積することによって,更に詳細な調査を実施し,「側脳室前角上位下損傷」が回転性脳損傷の病理診断根拠となる可能性について議論することになろう.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年間の剖検数146例は,一法医学講座としては標準的な数であり,その約3分の2に相当する100例において脳組織標本作製が可能であったことは,対照数を充分に確保出来ているという観点から,症例数には問題ない. 頭部外傷例の数は全体の1割未満であるが,予想の範囲内であり,一年目の症例数としては,充分だと考えられる.次年度,次々年度の症例を集積すれば当初の計画を満足するものと考えられ,全体としての進捗状況は良好と判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,平成23年度に実施した内容を踏まえ,症例収集を継続する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
脳組織標本作製ならびに,平成23年度の症例について得られた知見について,学会発表する.
|