研究課題/領域番号 |
23590843
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永井 恒志 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60600369)
|
研究分担者 |
下澤 達雄 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90231365)
|
キーワード | 睡眠時無呼吸症候群 / 間歇的低酸素 / 心機能障害 / autophagy / hemoxygenase-1 |
研究概要 |
睡眠時症候群(SAS)は先進諸国において1~4%の頻度で認められるが、特に肥満患者では25~35%と高率に認める。SASでは肥満、高血圧、高血糖、高脂血症などのメタボリック症候群を高率に合併し病態として複合しているため、各々の因子のSASに対する影響を臨床的に検証するのは困難である。そこでSASの中心的病態である夜間に繰り返す上気道閉塞を模した間歇的低酸素動物モデルを用いて病態解析する方法が世界的に行われている。 高脂血症はSASにおいて動脈硬化による高血圧、心筋梗塞、脳卒中を惹起するとして、病態の増悪因子と一般に広く認識されているが、最近心筋における脂質が心機能保護的に作用するとの報告が出始めている。そこで我々はSASの心機能に対する高脂血症の直接的な影響をSASの動物モデルを使用して検証することにした。モデルとしては7週齢雄のSDラットを間歇的低酸素(4%-21%×8時間/日×6週)(IH)+高脂肪食(脂質60%)を採用した。常酸素対照群、IH群、高脂肪食群、IH+高脂肪食群の4群を作成し、経時的に心機能を心エコーを用いて評価した。その結果、IH+高脂肪食群において急性期(4日目)でEF・FSが亢進し、心臓の過収縮および門脈圧上昇を来した。その後、1週間以内に他群と同等の心機能にまで一時的に回復した後、慢性期(6週)でEF・FSが低下する現象を見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の一つとしてSASおける細胞死を取り上げ、中でもautophagyに焦点を絞った研究を行ってきたが、異なる経路でautophagyを阻害するchroloquineと3-methyladenineを用いた生理学的実験で、いずれもIHでautophagyを阻害することで心機能が低下することが明らかになった。また、分子生化学的研究によりIH心筋におけるautophagy亢進はAMPKを介さずAktを介するcascadeで制御されていることを明らかにし、論文として発表した。平成24年度後期では、次の課題として高脂血症のIH心機能に対する影響に着目し、IH+高脂肪食で心機能の急性期および慢性期の変化を捉えることに成功した。これらの実績から研究は概ね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
低酸素暴露による肺高血圧、右心肥大、心筋梗塞、apoptosisやmonocrotalin誘導性肺高血圧をHO-1(hemoxygenase1)が抑制することが報告されている。また、HO-1由来のCOはcytochrome C oxidaseからH2O2を酸性し、これがmitochondria biogenesisを促進して酸化ストレスによる心筋障害を抑制するとの報告もある。そこでIH+高脂肪食ratの急性期に生じる心機能亢進と慢性期に生じる低下にHO-1による代償と代償機構の破綻が関与しているとの仮説のもと、HO-1阻害薬投与による生理学的実験を行うと同時に、心筋におけるHO-1発現やその分子cascadeを検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ラット購入費用として20万円、動物用飼料・消耗品費として10万円、抗体や阻害剤などの試薬類として30万円、残りの金額を設備備品関連消耗品として使用する予定である。
|