平成25年度は最終年度で、平成23~24年度を含めて採取された大動脈、頸動脈、脳動脈さらに脈絡叢(choroid plexus)の組織材料、血清及び脳脊髄液を各法医解剖例の事歴及び病歴と共に整理するのと並行して、病理組織学的検索及び組織、血清及び脳脊髄のゼラチナーゼ活性の解析を進めた。3年間で今年度法医解剖事例の約8割にあたる40例強を含めた100例以上を対象とした。結果として、一部のゼラチン分解活性を、個々の鑑定内容に還元できた。還元された内容は1)年齢推定2)動脈硬化性病変の早期病変及び進行病変各々の血管壁組織脆弱性の評価である。また、脳血管壁組織の脆弱性は動脈硬化の進んでいない部分がnegative rempdelingの様式をとり動脈瘤となると考え、脳動脈解析の契機を得る事ができた。年齢推定の応用は水中死体等、年間の司法解剖事例の約2~3割を占める身元不明死体に応用された(2013年)。全身各部位の血管における包括的なゼラチン分解活性評価は、成果をまとめて現在論文を投稿中(2014年)である。臓器の病理組織学的解析により血管病変の危険因子である潜在的な続発性アルドステロン症の頻度を明らかにした(2013年)。動物実験ではC57BLマウスを用いた悪性腫瘍進展における血管壁組織脆弱性評価の実績から引き続き「動脈硬化早期病変であるびまん性内膜肥厚は内膜にみられる一種の線維化である」という着眼点から1)全身性自己免疫疾患モデルマウスである遺伝子改変動物の形態学的解析や2)中毒学的再現実験を行い、それぞれに国際学会発表(2014年)及び欧文論文(2012年)で発表した。3年間の研究期間の最後年度として、全身各部位の血管壁組織の脆弱性に関与するゼラチン分解活性について総括すると共に、脳動脈瘤の解析の糸口をつかむことができた。今後も検索を進めて大型化しつつある血管壁ゼラチナーゼ分解活性のデータベースを予防医学的応用に向けてリアレンジしたいと考えている。
|