研究課題/領域番号 |
23590846
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
太田 正穂 信州大学, 医学部, 准教授 (50115333)
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キーワード | Tri allelic SNP / Gene Frequency / Criminal Investigation / Identity Testing |
研究概要 |
マイクロサテライト(MS)多型は、高感度、高特異性、および高識別能を示すことから、法医DNA検査で一般的に用いられている。しかし、MS多型は変異率が高い、遺伝子頻度の民族差が大きい、遺伝子のドロップアウト、劣化試料における検出力の低下等が見られることから、一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)は法医DNA多型検査に有効と考えられる。しかし、ほとんどのSNPsは2対立遺伝性を示すことから、識別能力が低く、法医DNA鑑定で利用するにはより高い識別能を有するSNPsの使用が望まれる。前年度までに、日本人に有効な3対立遺伝性を示す9種類のSNPsを確認した。本年度は、さらにNCBIデータベースで公表されている3対立遺伝性を示す17種類のSNPsに日本人における遺伝子情報の解析を行った。方法はinformed consent を得た健常日本人96名のDNAを用い、ダイレクトシークエンス法にて塩基配列決定し、3対立遺伝性SNPの確認をした。解析した17種類の3対立遺伝性SNPsのうち、16種類が3対立遺伝性を示した。3対立遺伝性を示したSNPのマイナーアリル頻度が5%以下の値を示したのは2種類(rs1630312, rs140676)で、残り14種類のSNPsのマイナーアリル頻度は、5%以上であった。最大3種類の遺伝子型を示す2対立遺伝性SNPに比べ、6種類の遺伝子型を示す3対立遺伝性SNPsの使用は、識別率も高くなり個人識別には有効であると考えられる。また、計算上15種類のSTRと同等の識別能力を示すには、2対立遺伝性SNPsは60種類程必要と言われているが、これまで3対立遺伝性を示した総数25種類のSNPsは親子鑑定や個人識別に利用価値が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、日本人96人から3対立遺伝性を示すSNPsの検索をdirect sequencing を用いて行ったところ、9種類見いだされた。これらの種類では現在利用されているSTRの解析能力には匹敵できないことから、本年度はNCBIデータベースや文献等で報告されている3対立遺伝性SNPsについて、更に追加解析を行った。その結果、新たに16種類が対立遺伝子の遺伝子頻度分布からDNA鑑定に有効なSNPsであることが解った。現在総数25種類の3対立遺伝性SNPsが利用できる状況下となった。また、これらのSNPsの一部について、SNaPshot法を利用してタイピングを試みたところ、single reactionではタイピング可能であったが、multiplex法は解析困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、法医実務に有効な3対立遺伝性SNPsを25種類確認した。NaPshot法を用いたsingle reaction での3対立遺伝性SNPs解析は可能であったことから、簡易的に検査可能なシステムとして、SNaPshot法の改良を試みる。また、TaqMan法等、他の簡易解析システムの有用性について検討する。 更に、混合試料での検出限界や、退化試料からの検出限界について解析を行う。具体的には以下の項目について検討する。 1)25種類の3対立遺伝性SNPsで得られた遺伝情報のデータベースを基に、multiplex解析用のSNP選択をする。 2) Direct sequencing法で解析する代わりに、簡易的かつ精度の高い検査法を構築する。 3) 25種類の3対立遺伝性SNPs について、SNaPshot法およびTaqMan法を用いた解析を試みる。 4) 検査に必要な資料DNA量、陳旧化した試料からのタイピングの可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これらの研究遂行のために本年度の予算は、PCR関連試薬、SNaPshot Multiplex試薬、および解析に必要な消耗品に充てる。
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