一塩基多型(SNP: single nucleotide polymorphism)は、法医DNA鑑定において主項目なDNA多型形質ではないが、マイクロサテライト(MS: microsatellite)多型の補助的検査項目として有効である。大多数の2対立遺伝性SNPsに対して識別能の高い3対立遺伝子性(Tri-allelic)を示すSNPs25種類を選出し、ダイレクトシーケンスにより日本人の遺伝子頻度を求め、多型情報を計算すると、総合識別能(PD)は0.99999999999997、総合排除率(PE)は0.99885と高度な鑑定能力を示した。この結果はTri-allelic SNPsが法医DNA鑑定で利用価値があることを示唆した。Tri-allelic SNPsの簡易検出法の試みとしてSNaPShot法を用いたタイピングでは、単一の3対立遺伝性SNPsについて、2種類のDNA(5ng)における混合比1:4まで判定可能であった。しかし、多数SNPsの同時判定が可能性を示すmultiplex解析を試みたが、判定の条件設定、エレクトロフェログラムの判読の煩雑さから、法医実務での実務性が低いことが示唆された。さらにTri-allelic SNPsが、次世代シーケンサー(PGMTm: ライフテクノロジー社)を用いた混合試料の定性・定量解析に有効か検討したところ、10ng のDNA量で、AC/AGヘテロ接合体混合比が9:1の試料におけるシークエンスリード数は、Aアリル:Cアリル:Gアリルに対して11936:9500:981であった。この結果はアリル比が試料の混合比を反映しており、Tri-allelic SNPsを用いることによりbi-allelic SNPsよりも定性・定量性において、より高い情報量が得られることから、混合試料解析に有効であることが示唆された。
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