研究概要 |
本研究では、個人識別としてのDNA型分析法がほぼ確立されつつある中で、唯一といってよい課題が劣化試料を対象とした解析法の検討である。一方、このような劣化試料では、DNAの断片化やPCR阻害物質の混入などが解析を困難とさせている主要因と考えられ、PCR産物の短鎖化に基づいたMiniSTR法の有効性が実証されている。今回、このような試料の解析プロトコールの1つとして、Y染色体の系統分類に関するSNPに着目してmultiplexシステムを開発を試み、劣化した試料にも応用可能なシステムの構築に成功した。具体的には、日本人集団のY系統分類では、D2及びOのハプログループに多く分布することを勘案し、Y系統分類の大別に加え、D2及びOを細分化するPCR産物の短鎖化をはかったシステムの構築を行った。これは、Y染色体上の22個 (M15, RPS4Y711, M231, P31, P191, M119, IMS-JST021355, M242, P99, M179, and M122, IMS-JST022457, M116.1, M125, P151, P120, P42, M179, and P12, SRY465, M95, P31, M88, and PK4)を3つのmultiplex PCR法により分類するシステムで、1つのmultiplexによってハプログループC,D,D1,D2,D3,O,O1a,O2,O3,N,Qを分類し、その他の2つのmultiplexによってハプログループD2及びO2の細分化を各々行うものである。劣化試料への有効性を検討した結果では、紫外線の照射によって人工的に劣化させた試料や汎用されているSTR型解析キットで分析が困難であった試料に対しても極めて高い分析能を有することを実証できた。
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