研究課題/領域番号 |
23590848
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
権守 邦夫 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (10006744)
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研究分担者 |
鈴木 修 浜松医科大学, 医学部, 理事 (70093044)
渡部 加奈子 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70288546)
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キーワード | スギヒラタケ / 急性脳症 / 質量分析 / 青酸 / 培養 |
研究概要 |
平成16年秋に日本海側の地方で発生した急性脳症の原因物質として、食用きのこスギヒラタケが疑われている。我々はスギヒラタケに青酸が含有されていることをすでに明らかにしたが、スギヒラタケ中で青酸が発生するメカニズムについては不明であるため、1.スギヒラタケ中に含有される青酸の年別変化について、2.青酸の発生メカニズムについて研究を進めてきた。平成23年度は天候不順によりきのこの発生数は少なく、スギヒラタケの採取数も十分でなく比較が困難であったが、平成24年度はスギヒラタケの発生時期が平年よりも遅くはなったが発生数は平年並みにあり、生育もよいきのこが採取できた。しかし、青酸の測定法に一般的に用いられる窒素リン検出器付きガスクロマトグラフでは青酸に対する感度や再現性が十分とはいえず、新たな分析法の工夫が必要なことがわかった。さらにスギヒラタケのきのこ中での青酸の発生メカニズムについて検討するために、新たにスギヒラタケの培養について検討を始めた。培養により発生したきのこの成長に合わせて青酸濃度を測定し、青酸発生のメカニズムを明らかにする。スギヒラタケの菌株の選抜や培地・温度条件などについて検討を加えているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原因不明急性脳症は平成16年の秋に日本海側の地方で発生したもので、その年の患者数は55名、死亡者は19名であった。このように高致死率の中毒であるにも関わらず、その後の発症の報告は無く、本研究の原因究明を難しくしている。従って原因究明は原因物質として最も疑われるスギヒラタケから行わなければならない。しかし、きのこは自然界に発生するもので研究材料としてのスギヒラタケの採取が天候による影響を受けてしまうことは避けられない。平成24年度は例年よりもスギヒラタケの発生が遅かったが、量的にも質的にも満足いくきのこが採取できた。平成23年度の採取で十分に量が得られなかったために採取時期を10月後半としたのが幸いであった。しかし、一般的に青酸の測定に用いられる窒素リン検出器付きガスクロマトグラフではきのこに含有される青酸に対する感度が十分とはいえず、新たな分析法の工夫が必要なことがわかったため、測定方法を変更する必要があり、その検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
スギヒラタケの採取は本年度も行う予定である。平成24年度と同様に10月後半を主な採取時期とする。きのこ中の青酸の測定法についてはすでにきのこ以外では測定法を確立した質量分析法の利用について検討する予定である。そして、高感度分析法が確立したら、本研究の研究開始前より採取してきているスギヒラタケを含めたきのこについて、年別のスギヒラタケ中青酸濃度を比較検討する。新たに検討を始めたスギヒラタケの培養により発生したきのこの成長に合わせて青酸濃度を測定する。研究の最終年度であるのでスギヒラタケ中青酸濃度の年別変化やきのこの成長段階過程での青酸濃度の変化などを検討し、青酸発生のメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は研究の最終年度であるが平成23年度が試料のスギヒラタケの発生が悪く十分量確保できなかったこともあり、平成24年度分だけでは不足であるので本年度も引き続き採取を行う。そのための旅費も確保する。平成24年度に引き続き、スギヒラタケの成長の度合いによる青酸発生量への影響など、詳細に検討することを試みる。また、高感度分析の必要性から、高速液体クロマトグラフィ-タンデム型質量分析器の使用を増やし、それに関わるカラム、移動相、抽出操作に必要なカラム等の購入に充てる。また、他の分析法による青酸の高感度検出法についても併せて検討する。
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