研究課題/領域番号 |
23590851
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西村 明儒 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60283561)
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研究分担者 |
徳永 逸夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30116842)
石上 安希子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (60359916)
主田 英之 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90335448)
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キーワード | Alzheimer / Braak stage / lectin / dopaminergic / serotonin / cholinergic / microglia / astrocyte |
研究概要 |
今年度は,レクチン染色と神経変性,細胞傷害,酸化ストレス等のマーカーや神経伝達物質等に対する抗体を用いた免疫染色を行い,球状沈着物の染色性について検討した。徳島大学法医学分野で行われた法医剖検例79例の脳の海馬組織を用いた。ホルマリン固定した海馬をパラフィンで包埋し,薄切後,レクチン染色(DBA,GS-1B4)を行い球状沈着物を検出した。また,GFAP,リン酸化Tau,ApoE,コンドロイチン硫酸(CS),YKL-39,YKL-40,α-Synuclein,Glutamate Transporter EAAC1,5-Lipoxygenase,Single Strand DNA (ssDNA),Vimentin,Dopa decalboxylase DDC,Cadherin N,NOS,EpoR,HSP70,等に対する抗体を用いて免疫組織化学を行った。さらにGallias Braak染色を用いてBraak Stage分類を行い神経変性の程度を評価した。そして各々の方法による球状沈着物の染色性についてと,それらとBraak Stage分類・死因・生前の精神症状の有無との相関性について検討した。 結論を箇条書きにすると,①球状沈着物にはニューロン,マイクログリア,アストロサイトなど由来の異なるものが存在する,②リン酸化タウの蓄積による細胞障害が関わっている可能性がある,③Braak Stageの比較的早い段階からssDNAが陽性であるとこから,認知機能障害が出現する以前に既にアポトーシスが進行している,④炎症に関係するCSやYKL-39やストレス応答に関与するHSP70が陽性であることから炎症やストレスによる細胞の変性も関係している,⑤ニューロン由来がアストロサイト由来よりも早くの出現することからアストロサイトの保護機能は早い段階で低下する,以上が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、Braak Stage分類とレクチン陽性球状沈着物におけるABO式血液型から適当と考えられるレクチン(A型はGSI-B4、B型はDBA、AB型はUEA-I、O型はGSI-B4またはDBA)との反応を調べることによって、本沈着物と認知症性変性疾患における変性所見とを比較検討したところ、SPDの出現頻度が比較的多い+や+++のものはBraak Stageの低い症例に多く見られ、-のものがBraak Stageの高い症例に見られた。 本年度は、GFAP,リン酸化Tau,ApoE,コンドロイチン硫酸(CS),YKL-39,YKL-40,α-Synuclein,Glutamate Transporter EAAC1,5-Lipoxygenase,Single Strand DNA (ssDNA),Vimentin,Dopa decalboxylase DDC,Cadherin N,NOS,EpoR,HSP70,等のニューロン、マイクログリア、アストロサイト、炎症反応、アポトーシス、ストレス応答に関連する抗体を用いて研究を行った。パラフィン切片を用い、蟻酸処理、オートクレーブ処理、マイクロウェーブ処理などの抗原の賦活化を行ったことで法医剖検例への応用へ向けて進展していると考える。蛍光多重染色や免疫電顕の手法が十分に行えていない点で十分な達成度とは言いがたい状態である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまで検索を行った症例において、蛍光多重染色による検索を行い、本年度の結果示唆された①球状沈着物にはニューロン,マイクログリア,アストロサイトなど由来の異なるものが存在する,②リン酸化タウの蓄積による細胞障害が関わっている可能性がある,③Braak Stageの比較的早い段階からssDNAが陽性であるとこから,認知機能障害が出現する以前に既にアポトーシスが進行している,④炎症に関係するCSやYKL-39やストレス応答に関与するHSP70が陽性であることから炎症やストレスによる細胞の変性も関係している,⑤ニューロン由来がアストロサイト由来よりも早くの出現することからアストロサイトの保護機能は早い段階で低下する、等の仮説の検証を行う予定である。前述の組織学的検討は、死後経過時間の比較的短い、組織の死後変化の軽度の症例を用いて行うが、現実の鑑定では、常に良好な条件で検査を行えるとは限らない。本年度に行った抗原の賦活化法を活用しつつ、実際の法医剖検例への応用を図りたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品となる機材は購入せず、一次抗体、蛍光化二次抗体、固定・賦活化用試薬等の消耗品を購入する予定である。
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