研究課題/領域番号 |
23590853
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
賀川 慎一郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (70562213)
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研究分担者 |
中園 一郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30108287)
池松 和哉 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80332857)
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60617421)
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キーワード | 損傷 / 受傷時期推定 / 2次元電気泳動 |
研究概要 |
法医実務における損傷受傷時期の診断は極めて重要な命題である。しかし、受傷後早期(3~5日)の受傷時期の証明は極めて困難で ある。しかも、この時期の蛋白質発現動態は全く未知であるために、蛋白質マーカーを利用した解析法を用いることも不可能である。 そこで、申請者らは、プロテオーム解析法を用いて、この時期の一部の蛋白質発現動態を検索した。具体的には、6週齢BALB/cマウス の背部に 打ち抜き損傷を作製し、2次元電気泳動法を行い、スポットを銀染色にて確認した。解析対象は受傷三日後で、controlとし て打ち抜き直後を用い、皮膚損傷部における蛋白質発現状態を直接的に比較した。1回の泳動にて2000程度のspot出現を確認し、かつ 、受傷後3日に特異的発現するspotを30個程度見出した。この中で、最大の発現有意差を認めたspotについては、MALDI-TOF-MSにて蛋 白質同定検索を行い、chilinase 3-like 3(Chi3l3)と同定した。さらに、遺伝子発現量をReal Time PCR法にて検討し、Chi3l3 mRNA が受傷後3日という時期に、特異的な爆発的発現(他時期に比して400倍!)が認められた。さらに、Chi3l3のプチチドを作成し、アルブミンと結合後に家兎に免疫し、Chi3l3抗体を作成た。得られた抗体を用いて、Wetern blottingを行ったところ、受傷後3日での蛋白 質の特異的増加を確認した。また、免疫組織学的検討を行ったところ、Chi3l3はマクロファージに発現しており、やはり受傷後3日に 組織学的にも増加が確認可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も困難である2次元電気泳動法の再現性を高め、皮膚損傷部における蛋白質発現状態を比較することができた。さらに、統計学的検討を行い、受傷後3日に特異的発現するspotを30個程度見出すことができ、最大の発現有意差を認めたspotについては、MALDI-TOF-MSにて蛋白質同定(chilinase 3-like 3(Chi3l3)と同定)を行うことができた。 さらに、遺伝子発現量をReal Time PCR法にて検討し、Chi3l3 mRNA の経時的な変動を認めたこと、また、プチチドを作成し、家兎に免疫し、Chi3l3抗体を作成し、Wetern blotting、免疫組織学的検討をおこなうことができた。 特に、Chi3l3の発現がマクロファージに発現していること、受傷後3日に 組織学的にも増加が確認可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
現在ヒト組織を用いてChi3l3の発現を確認している。 また、これらの成果を論文発表したいと考えている。 さらに、Chi3l3のanti-senseを用いることによって受傷部位の変化がどのようになっていくのかを検討することを考えており、生体内(損傷受傷部位)でのChi3l3の生理的役割を明らかにしたい。 また、ほかのマクロファージのマーカーと比較してChi3l3の損傷受傷時期推定の有用性を検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していたCD14のウエスタンブロッティングを行った際に、予備実験で得られたPositive Signalが本実験では 得ることができなくなった。また、この原因として機器の不調であることが判明したが、その時期が1月下旬であった ため、ウエスタンブロッティングに充てる予定であった経費が未使用となった。 機器を再導入、もしくは、修理して可及的速やかにウエスタンブロッティングを行いたい。
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