本研究では減圧障害の診断基準を確立することを目的として,減圧障害の動物実験モデルを作成して研究を行った。減圧障害のリスクを検討するために非肥満ラットと肥満ラットを用いて,それぞれについて生前減圧群(AD),死後減圧群(PD)ならびに対照群の3群を作成し,血管内気泡と組織学的所見について比較・検討を行った。特に肺の気腫性変化においてはAD群とPD群とを剖検所見から鑑別できる可能性が示唆されたため,画像処理ソフトによる定量評価を行った。 実験結果は,以下の通りであった。 血管内気泡はAD群とPD群両方に確認された。AD群では,高圧負荷時間とともに血管内気泡と肺の気腫性変化が高度になり,死亡群ならびに肥満ラットにおいて変化がより著明であった。また,本研究では肺の気腫性変化の定量評価によって生前減圧と死後減圧を鑑別できる可能性が示された。本結果は,実務的に減圧障害を含むダイビング関連死亡の剖検診断に役立つと考えられる。
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