研究課題/領域番号 |
23590861
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
王 路 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (60555051)
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研究分担者 |
北村 修 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70266609)
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キーワード | 覚醒剤 / 神経細胞障害 / 酸化ストレス / 薬物依存 / エピジェネティックス |
研究概要 |
本研究は、覚醒剤(methamphetamine)濫用者において、1)神経毒性によるアルファシンヌクレイン(α-synuclein)の病理学的変化であるシンヌクレオパシー(synucleinopathy)、2)薬物依存の形成におけるエピジェネティックなメカニズムについて免疫組織化学的手法により検討し、3)上記のデータから、「神経毒性」と「薬物依存」との相互関係を解析するものであり、本研究から得られた成果により、覚醒剤濫用による中神経系障害の法医病理学的診断の精度向上を目指すものである。 覚醒剤濫用者の症例(14例)及び対照群の脳より、中脳(黒質)、線状体(側坐核、被殻及び尾状核)、海馬、前頭葉等の部位を切り出し、組織切片を作成した。中脳及び線状体について、β-synuclein、γ-synuclein及びmethyl CpG binding protein 2 (MeCP2)抗体を一次抗体として、免疫組織化学的染色を行った。その結果、β-synuclein、γ-synucleinについては、覚醒剤濫用者群において、明らかな陽性像を認めなかった。一方、MeCP2については、覚醒剤濫用者群の線状体において、陽性像を認めた。さらに、神経細胞及びグリア細胞のマーカーとの二重染色により、MeCP2の局在が、神経細胞にあることが明らかとなった。 したがって、覚醒剤濫用者においては、酸化ストレスによるドーパミン作動性マーカーの障害やグリア細胞の反応に加えて、エピジェネティックなメカニズムが関与していることが明らかとなった。これは、薬物依存という状態を示唆していると考えられ、覚醒剤濫用者の病態に関与する可能性が示唆され、覚醒剤濫用の法医病理学的診断に寄与するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、覚醒剤濫用者の脳において、シンヌクレオパシー及びエピジェネティックなメカニズムの解析が行われている。したがって、酸化ストレスによるドーパミン作動性マーカーの障害やグリア細胞の反応に加えて、エピジェネティックなメカニズムが関与していることから、薬物依存という状態を示唆していると考えられる。この結果は、覚醒剤濫用者の病態に関与する形態学的及び精神的変化の両者を明らかにすることより、覚醒剤濫用の法医病理学的診断に寄与するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
覚醒剤濫用者の脳について、脳由来神経成長因子(brain-derived neurotrophic factor; BDNF )について免疫組織学的染色による解析を行い、エピジェネティックなメカニズムとの関連について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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