研究課題/領域番号 |
23590866
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
金森 達之 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (40356192)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肝細胞 / 三次元培養 / スフェロイド / 乱用薬物 / 代謝 |
研究概要 |
本年度は、トランスパレント(株)より市販されている三次元培養用プレート(Cell-able)上で培養した肝細胞による薬物代謝実験を行い、in vivo代謝がどの程度再現されるかを調べた。具体的には、Cell-ableに肝細胞を播種してスフェロイド(肝細胞の塊)を形成させ、これに麻薬4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェネチルアミン(2C-B)あるいは麻薬2,5-ジメトキシ-4-エチルチオフェネチルアミン(2C-T-2)を添加し、24時間あるいは48時間培養後、培養液を採取した。得られた培養液から代謝物を抽出し、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)あるいはガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)を行い、代謝物を確認した。 2C-Bについては、培養液中にO-脱メチル-N-アセチル体、カルボン酸体、アルコール体等の代謝物が確認された。また、2C-T-2については、培養液中にスルホキシド体、スルホキシド-N-アセチル体、スルホン-N-アセチル体、カルボン酸体等の代謝物が確認された。これらは、いずれも2C-Bあるいは2C-T-2を投与したラット尿中に排泄されることが確認されている。 以上の結果から、Cell-ableプレート上の三次元培養肝細胞(肝細胞スフェロイド)を用いた代謝実験により、乱用薬物のin vivo代謝が良好に再現されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画と比較し、薬物は2種(当初は4種)、培養プレートは1種(当初は2種)の検討となったが、三次元培養プレートCell-able上に形成させた肝細胞スフェロイドにより、用いた薬物2種のいずれについても、in vivoにおける代謝パターンが良好に再現されることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験により、三次元培養プレートCell-ableの有用性が示唆されたことから、次年度は、本プレートを用いた実験系についてさらに詳細に検討する。具体的には、ラット肝細胞を用いた薬物代謝実験を行い、振とう培養の効果、血管内皮細胞との共培養の効果等について検討し、最適な培養条件を決定する。また、検討する薬物数を増やし、本実験系の有用性についてさらなる検証を行う。 ラット肝細胞を用いた検証実験の後、ヒト肝細胞を用いた薬物代謝実験を行い、in vivoデータと比較し、本実験系の乱用薬物代謝モデルとしての有用性について総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
三次元培養プレート、ラット凍結肝細胞、血管内皮細胞、培地、シャーレ、ピペット、分析用カラム、バイアル等の消耗品に135万円程度の支出を予定している。 また、国際学会(開催は国内)及び国内学会各1回参加の旅費として10万円、国際学会及び国内学会各1回の参加費として6万円、英文校閲料1回分として3万円の支出を予定している。
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