研究課題/領域番号 |
23590869
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中馬越 清隆 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10436272)
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研究分担者 |
玉岡 晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50192183)
小金澤 禎史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80431691)
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キーワード | 認知症 / 前庭機能 / 温度眼振検査 / 視性抑制 / 眼球運動障害 / アルツハイマー病 / 前頭葉側頭葉変性症 / エア・カロリック装置 |
研究概要 |
認知症患者は歩行障害を呈し、転倒・骨折を起こしやすい傾向が知られている。この原因の一つとして、前庭小脳系の機能障害によるバランス障害が考えられ、このメカニズムを解明し転倒予防に役立てることを最終目的とする。本研究では認知症患者の前庭機能を眼球運動検査及び温度眼振検査といった電気生理学的検査で解析評価する。 筑波大学附属病院神経内科外来で認知症と診断された患者を対象とし、電気眼振図検査を実施した。また加齢による前庭小脳系機能低下が以前より指摘されており、認知症患者との年齢マッチングも検討を要するため、認知症を伴わない60歳以上の高齢者の正常被験者を対照者として同検査を実施した。 現在までの結果では、認知症を呈する疾患の一つである前頭葉側頭葉変性症の症例において前庭刺激検査における視性抑制が障害されている傾向を認めた。一方で明らかな末梢や脳幹・小脳障害による前庭機能異常は認めなかった。これは日常動作で前庭のバランス障害をきたした際に、視覚情報によって代償する働きが障害されていることを意味する。前頭葉側頭葉変性症患者では脳内での視覚情報処理機構の障害が出現することによって、歩行障害や転倒傾向の原因になる可能性が示唆された。認知症のない高齢者の正常被験者では、過去の報告から加齢による前庭機能低下が予想された。正常対照者例数を増やし、若年者と高齢者で比較検討したところ、視性抑制などの前庭機能を代表するマーカーすべてに関して有意な差は検出されず加齢の影響は少ないことが判明した。今後認知症患者の症例数を増やし正常者との統計学的差異を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は予定通り正常被験者の電気眼振図検査を実施し、加齢による前庭小脳系の変化を検討することができた。 認知症患者に関しては検査承諾が厳しく、本年度のデータ収集は微増にとどまり、来年度も引き続きデータ収集が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、引き続き認知症患者での前庭小脳系障害の評価と統計学的検討を行う。 認知症患者の脳障害と前庭バランス障害との関係性を、画像検査結果も取り入れて検討する。これらの結果から神経学的に認知症患者に適した転倒対策を検討し、実際に認知症患者に取り入れてその効果を最終的な検討目標としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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