研究課題
この研究でわれわれは、医学生における臨床推論能力の評価方法を開発し、ケース難易度と推論プロセスのパフォーマンスとの関係を世界で初めて明らかにした。臨床的に診断難易度の低いケースへの推論では、直覚的推論(システム1)が有効であり、分析的推論(システム2)を上回るパフォーマンスを示した。逆に、臨床的に診断難易度の高いケースへの推論では分析的推論(システム2)が有効であり、直覚的推論(システム1)を上回るパフォーマンスを示した。臨床的に診断難易度の高いケースでは、システム2に対する鑑別診断リマインダー介入が有効であった。これは、症候別に鑑別診断を想起させる診断リストであり、コモンな疾患、重症度や緊急度の高い疾患などには、わかりやすいマークなどを付けて利用しやすい工夫を施した。しかしながら、認知心理学的なアプローチに基づいた認知バイアスの除去リマインダーは無効であり、診断推論パフォーマンスの向上につながらなかった。また、Eラーニング・テクノロジーを用いて臨床推論学習パイロット・プログラムを開発し、数多くのケーススタディーの問題・回答・解説集を作成した。Eラーニングによる症例問題でのグループ学習の満足度は高いことが示され、推論能力の向上への有効性が示された。複数の医学部間のグループ学習が効果的であることも示した。われわれの研究であきらかになった臨床推論パフォーマンス向上のための新規的な介入によって、医学部卒業後に臨床の現場における推論エラーを減らし、患者アウトカムを改善させることにより、医療の質を向上させることにつながることが期待される。
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International Journal of Medical Education
巻: 5 ページ: 1-6
10.5116/ijme.52a7.7280
BMC Medical Education
巻: 13 ページ: 156-156
10.1186/1472-6920-13-156