神経性食欲不振症患者におけるグレリンの胃電図への影響を検討する計画であったが、課題開始年の平成23年度に臨床研究施設を予定していた東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科の主任教授が代わり、グレリン投与試験の許可が得られなかったので、グレリン分泌刺激作用がすでに報告されている漢方エキス剤TJ-43(六君子湯)の短期、および、長期投与による胃電図の変化の検討試験に変更し、グレリンの胃の電気的活動を指標にした治療効果を探索した。 1)29名の神経性食欲不振症患者(制限型21例、むちゃ食い/排出型8例)の質問紙(IZUMOスケール)による消化器自覚症状と、血中活性型グレリン濃度との関連を検討し、制限型はむちゃ食い/排出型より有意にIZUMOスケール総得点が高く、IZUMOスケール総得点や胃排出能に関する得点と血中の活性型グレリン値が負の相関を有することを明らかにした。2)29名の患者の空腹時の胃電図をMedtronic社のPolygraf ID(4チャンネル)で周波数解析を行い、制限型はむちゃ食い/排出型に比べて正常波の出現%が低く、IZUMOスケールで得点の高い制限型患者では空腹時と摂食後の正常波の減少を確認した。超低体重の制限型でIZUMOスケール得点が高い患者では、有効な胃電図波形が得られない症例が見られた。3)消化器自覚症状が強い慢性の制限型で胃電図で異常が認められる7例で、5gのTJ-43と水50mlの内服時における胃電図の変化について検討し、水50mlのみの摂取を対照とした。TJ-43は急性投与でも正常波を増加させた。7.5g/日のTJ-43を2週間継続内服時の胃電図のでは、正常波の増加と、食後の振幅の増加を認めた。 TJ-43による胃電図の変化から、グレリンが急性、慢性に胃の電気的活動を改善することが示唆された。
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