研究課題/領域番号 |
23590874
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
林 真一郎 独立行政法人国立循環器病研究センター, 高血圧腎臓部, 医師 (20396740)
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研究分担者 |
里 直行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (70372612)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 |
研究概要 |
平成23年度は、アルツハイマー病における脳血管の微細構造変化を捉えることを目標に研究を進め、以下の研究結果を得ることができた。 生後8ヶ月のAPP23マウス(アルツハイマー病のモデルマウス)では、明らかな記憶障害を示し、記憶を司る海馬領域では微小血管密度が著名に減少していることを発見した(健常マウス4.9個/50um2, APP23マウス2.8個/50um2)。24ヶ月齢になると微小血管密度はさらに減少していた(健常マウス4.3個/50um2, APP23マウス0.8個/50um2)。電子顕微鏡解析を行なったところ、APP23マウスの微小血管の内皮細胞において、細胞内自己貪食、オートファジーが誘導されていることを発見した。興味深いことに、オートファジーが誘導された内皮細胞間のタイトジャンクションは、オートファジー誘導の見られない健常マウスに比し、著名に広がっていることも確認できた。免疫染色と電子顕微鏡解析により、オートファジーの誘導は、APP23マウスの海馬や皮質にも見られ、また微小血管内皮とその周囲の神経細胞においても確認できた。構造解析が可能なアルツハイマー病のヒト剖検組織も準備しており、平成24年度以降には病態マウスで得られた結果との比較が期待される。平成23年度の研究により、アルツハイマー病における脳血管の微細構造変化を捉えることができた。病態進行に脳血管内皮の細胞レベルでの変化、特に細胞内オートファジーカスケードの関与が明らかになった。アルツハイマー病の治療につながる重要な発見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の平成23年度研究目標(アルツハイマー病における脳血管の微細構造変化を捉える)をおおむね達成することができた。研究計画初年度に病態マウスより得られた研究成果は、日本循環器学会の演題採択となり、平成24年3月に発表することができた。平成24年10月には国際高血圧学会での発表も決定している。また、国際学術論文への投稿準備も開始している。このように、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成24年度以降)には、研究計画に沿って、(1)メタボリックシンドローム合併による脳血管の微細構造変化をモデルマウスで比較、(2)アルツハイマー病における脳血管内皮細胞の微細構造変化に関与する分子の同定、を行なっていく。また、ヒト剖検脳組織の解析も平衡して行なう。研究成果は国際学会や学術論文の発表につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に必要な、各種試薬、抗体の購入費、病態モデルマウスの作成維持費、遺伝子タンパク解析の委託費、顕微鏡解析用の組織標本の作成費、そして学会発表や論文作成にかかる費用等を、平成24年度以降の研究費として使用計画をたてている。
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