研究課題/領域番号 |
23590876
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
森田 幸代 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (50335171)
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研究分担者 |
山田 尚登 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50166724)
高橋 正洋 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (30548194)
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キーワード | がん患者の精神症状 |
研究概要 |
① 難治性のせん妄などに対する適切な鎮静法を確立する目的で、当院で緩和ケアチームが症状緩和に介入したミダゾラムによる鎮静例に関して後向き調査を行った。期間は2011年8月から2012年7月までの1年間で、患者数は7名、平均年齢66.7(±標準偏差=7.4)歳、がん種は肺がん、前立腺がん、肝細胞がん、腎盂がん、上咽頭がんであった。ミダゾラムはせん妄(n=6)、不眠(4)、軽い鎮静(2)、身の置き所のなさ(1)に使用されており、投与時間は夜間のみ3名、終日3名であり、投与量は0.2~2㎎/時間、初期投与量は1~13.6㎎/日であり、全例で投与初期に症状が改善していた。モルヒネを併用していた5例では呼吸抑制は認められず、せん妄6例のうち3例で意識障害が改善し疎通が可能となっていた。0.2~0.42㎎/日といった少量であってもモルヒネや抗精神病薬との併用で催眠・鎮静効果が得られた症例があった。がん患者に対してミダゾラムを安全に使用するために、今後は投与量や投与時期などに対する検討が課題であると考えた。 ② 滋賀県の11の総合病院の職員対象に精神科医へ依頼したいことについてアンケート調査を行い(回収率;72%)は、せん妄や抑うつに関しての対処や治療が8割以上、治療抵抗例の対処や重症専門施設への転院紹介、具体的な対処法や処方などの提示も求められていた。また、実際の患者さんの診察や共同治療、見通しの説明、家族への説明、症例検討会の開催、行政に対して精神科医への相談窓口や常駐で精神科医がいる施設との連帯・協力などを望む声もあり、精神症状の評価や処方を含む対応をタイムリーに行うことを精神科医に求める声が多いことがわかった。 ③ 今年度は高速液体クロマトグラフィーを用いた向精神薬やトラマールなどの血中濃度測定系を確立し、向精神薬による認知機能の低下について予備的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
がん患者に対して抗うつ薬や抗精神病薬を投与する際の、用量、血漿中濃度と効果・副作用の関係を検討することを計画していたが、現状では入院患者では同意を得ることが困難な場合が多く、少数の予備的研究を行っている状況である。原因としては、がんが進行している患者でせん妄や抑うつが発見されることが多いため、すでに身体症状がかなりの苦痛となっている患者に、さらに研究目的の機器をつけたり、質問による症状評価を繰り返すなどの行為が苦痛になるためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、早期に抑うつやせん妄を発見するために、発症前の患者に対してスクリーニングを行うこととし、その時から患者に研究への理解を得ていく方向を目指していく。また、簡易脳波計を用いて早期にせん妄などの意識障害を発見し、診断して治療することを推進することとし、研究への協力が患者の症状改善につながるように工夫していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、症状スクリーニングや認知機能評価、簡易脳波判定に関して、研究補助業務を行う人材を確保し、その雇用費用にあてて行く予定。
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