研究課題/領域番号 |
23590876
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
森田 幸代 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (50335171)
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研究分担者 |
山田 尚登 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50166724)
高橋 正洋 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (30548194)
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キーワード | 緩和ケア / 精神症状コントロール |
研究概要 |
①今年度は、緩和ケアチーム依頼患者における精神症状の推移について、調査、検討した。総計129例の依頼中、依頼目的(複数回答あり)は疼痛緩和が95例(約73.6%)と最多であったが、それについで、精神症状緩和が90例と約70%を占めた。精神症状ごとの内訳(複数回答あり)では、不安、抑うつが66例(約51.2%)で最多であり、ついで不眠32例(約27.8%)、せん妄13例(約10.1%)であった。介入理由の変遷をみてみると不安・抑うつは66→44例(約34.1%)に減少しており、介入により総数が軽減する可能性が示唆される。しかし、せん妄は13→22例(約17.1%)に増加しており、一般病棟ではせん妄が発見されにくい可能性、病状進行によりせん妄が生じる可能性などが示唆された。また、また、精神科以外の患者に使用されている向精神薬はリスペリドン内服が最多で、経腸栄養などの投与経路が選択できることと、内服のしやすさから内用液の剤型が好まれている可能性が示唆された。また、ハロペリドール静脈内投与は緩和ケアチームの介入以前に使用されていることが多く、緩和ケアチームに対しては難治性のせん妄などへの対処が望まれる傾向があった。そこで、前年度に調査した結果から得られたモルヒネ使用例に対するハロペリドールとごく少量のミダゾラム(0.5㎎/時間)の夜間併用を推奨し、副作用なく良好な睡眠が得られた例や、せん妄が改善した例を経験したが、症例数が少ないために有意性は得られなかった。 ②さらに今年度は、長期にわたって高いQOLを有している進行がん患者の心理的態度についてのインタビュー調査を行い、無理のない身体活動に伴った安定した自己像、不安へのとらわれや悲観的思考を行動により解消するような行動パターンや現状への感謝の気持ちを見出した。また、現状を認識して、手放していくといった受容に関連する心理的変化も見られたので、緩和医療学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
早期に抑うつやせん妄を発見するために、発症前の患者に対してスクリーニングを行うこととし、その時から患者に研究への理解を得ていく方向を目指していくこととしていたが、それでも同意取得が困難な事もあり、症例確保が順調に進まなかった。このため、年度を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
症例数を増やすためにも、今までの知見をもとに、滋賀県内の病院で、頑固な不眠やせん妄を呈するがん患者に対しての対処法を導入し、結果を見ていく。 また、がん患者全般に対して、せん妄の発症を早期予測するために、簡易脳波計などを使用したスクリーニングを行っていくことを続けていき、さらに不安の解消法としての方策を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の調査、分析で有意な結果が得られなかったため、さらに期間を延長して症例数を増やすことが望ましいと考えた。 引き続き、がん患者の精神症状スクリーニングや、不眠患者に対する簡易脳波測定に関して、必要な消耗品や研究補助に対する雇用費用に使用する予定である。
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