研究課題
平成24年度まで行っていたAβ1-40脳室内投与モデルマウスを用いた研究では、Aβ1-40投与群とAβ40-1投与群の間で明らかな認知機能の差は認められなかった。これにはいろいろな問題点が考えられたが、マウスの個体差が大きく、評価困難な印象があり、Aβ脳室内投与をアルツハイマー病モデルマウスとする妥当性が我々の実験系からは認められないことから、大阪大学臨床遺伝子治療学里直行先生からAPP23マウスを御供与いただき、AT1a欠損マウスおよびACE2欠損マウスと掛け合わせをすることに方向転換をして、現在ダブルノックアウトマウスを作成中である。ダブルノックアウトマウスの作成と並行して糖代謝とレニン・アンジオテンシン系との関連を探索した。我々は従来よりACE2欠損マウスを有しており、これの耐糖能異常を調べて、AngIVの耐糖能に対する影響を比較検討して、認知機能との関連のベースデータとすることにした。普通食投与ではACE2ノックアウトマウスと野生型マウスの耐糖能は同等であったが、アンジオテンシンII投与や高カロリー食はACE2欠損マウスの耐糖能を野生型マウスに比し顕著に悪化させた。ARBは高カロリー食による両群の耐糖能を改善したものの依然両群間で差を認め、アンジオテンシン(1-7)阻害薬の同時投与あるいはアンジオテンシン(1-7)の単独投与により両群の差は消失した。グルコース輸送に重要なGLUT4はACE2ノックアウトマウスにおいて顕著に低下しており、その発現はアンジオテンシン(1-7)により制御されることがアンジオテンシン(1-7)又はアンジオテンシン(1-7)阻害薬投与により示された。また骨格筋筋芽細胞の筋管細胞への分化誘導下にアンジオテンシン(1-7)を投与するとMEF2AとGLUT4の発現亢進を認めた。これらよりアンジオテンシン(1-7)はMEF2AおよびGLUT4の発現調節を介した糖代謝改善作用を有することが示唆された。
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Diabetes
巻: 62 ページ: 223-233
Hypertension Research
巻: 36 ページ: 433-439