研究概要 |
生後10週齢の雌Wistar ratに卵巣摘出術と高フルクトース負荷(FF)を行った閉経後骨粗鬆症モデルにおいて高回転型の骨代謝にともなう尿中Ca排泄量の増加、骨密度の減少を伴ってヒトの2型糖尿病に類似した病態が確認された。この系においてレニン・アンジオテンシン系(RAS)の亢進が確認されたので、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を併用したところ、FFによって惹起された骨吸収の進展抑制とともに耐糖能異常の改善、最終糖化産物 (AGEs)の上昇抑制、脛骨におけるペントシジン蓄積の減少を確認した。骨の脆弱性を3点曲げ試験により評価したところ、1カ月後の測定値においては、最大荷重(N), 硬性 (stiffness; N/mm), 曲げ弾性 (N/mm2) and 吸収エネルギー (N.mm) の各パラメータにおいて有意差は認められなかったが、3ヵ月負荷モデルにおいては最大荷重、曲げ弾性、吸収エネルギーにおいてARB併用群が有意な上昇を示して糖尿に伴う骨梁の柔軟性、耐荷重の悪化を防止した結果が得られた。この効果がRAS抑制薬に共通するクラス効果であるか薬剤特異性のドラック効果であるのかを検証するために、アクリジンオレンジ試薬による破骨細胞酸産生能と酸化ストレス(ROS)を指標にした培養検定系を立ち上げ各種降圧剤を比較検証した。その結果、オルメサルタン、バルサルタンなどのARBはROS産生の低下を伴って破骨細胞の酸分泌を制御して骨吸収を抑制したが、テルミサルタンにはその効果が認められず、同様のPPARγ作動薬であるトログリタゾンの検証結果より、ドラッグ効果依存性であることが示唆された。また対照群として用いたカルシウム拮抗薬の結果においても同様のドラッグ効果が認められた。以上の結果より同じクラスであっても副次作用が異なることが証明され病態に応じた薬剤の適応が重要と考えられる。
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