研究概要 |
高齢社会となって認知症やパーキンソン病(PD)が急増している。認知症の前駆段階としての軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)が注目されているが、軽度Parkinson徴候(mild Parkinsonian signs:MPS)がPDや認知症の前駆段階である可能性も指摘されている。2008年に島根県海士町において調査し、MPS例を把握し、MPSの頻度を本邦で初めて明らかにした(Uemura Y, et al. J Neurol Sci 2011)。本研究においては、これらのMPSを示す65歳以上の住民について縦断的予後調査を行い、Parkinson症候群(PS)や認知症への進行、死亡率について検討した。 健常者群では320例中11例(3.4%)がPSに進行したのに対し、MPS群では103例中20例(19.4%)がPSに進行しており、MPS群はPSに進行する率が有意(p<0.001)に高率であった。MPSからPSへの移行群は、非進行群に比して高齢、睡眠障害、認知症を示すことが特徴であることも明らかになった。また、MPSは認知症発症の危険因子であることも示された。 一方、MCI例において、MPSを有す群は有さない群に比して有意に高率に認知症に移行した。 さらに、死亡についてのPS群、MPS群、正常群における検討では、PS群では19.4%、MPS群では12.2%、正常群で5.2%とPS群、MPS群で有意に死亡率が高いことが示された。 今後、MPSに注目して進行予防などの介入について検討してくことが必要であると考えられた。
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