研究課題/領域番号 |
23590887
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
山田 浩 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40265252)
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キーワード | インフルエンザ / 緑茶 / うがい / 学校保健 / 高校生 |
研究概要 |
インフルエンザは毎年、流行を繰り返す重症の急性上気道感染症であり、集団生活を営む学校での予防対策はことさら重要である。本研究ではカテキンを始めとする緑茶成分の、基礎研究において示されるインフルエンザ感染抑制効果に着目し、緑茶うがいによるインフルエンザ予防効果を、高校生を対象としたランダム化比較試験により検討した。研究には、各高校で参加を呼び掛けた高校1,2年生2,838名のうち、本人及び保護者から同意の得られた757名が参加した。前年度(平成23年度)から記入された調査票を全て回収し、データの整合性チェックを行い信頼性を確認した上で、コンピュータのデータシートに入力・取り込みを行い、データのクリーニング後、データ固定し、統計解析処理を実施した。その結果、緑茶うがい群及び水うがい群における背景情報は、性別、学年、公共交通機関の利用、かぜの罹りやすさ、茶飲用習慣等において差がなかったが、唯一、部活動で群間差が認められた。インフルエンザ発症者数は、同意撤回及び一度も調査票を記入しなかった10名を除いたFAS (Full Analysis Set) 解析対象747名において、全体で47名(6.3%)認められ、うち緑茶うがい群21名(5.5%)、水うがい群26名(7.2%)であり、緑茶うがい群で発症者の減少傾向を認めたものの有意ではなかった(p=0.37)。同意撤回・データ欠測・うがい実施率不良者は全体で30%認められ、両群間の比較では、水うがい群(34%)の方が緑茶うがい群(27%)よりも多かった。今回の結果では、緑茶うがいによるインフルエンザ発症者の減少傾向が認められたものの検出力不足から有意な差には至らなかった。予想されたうがいの効果量が少なかった理由として、うがい実施の不徹底等、臨床試験遂行上のマネジメントにおいて解決すべき課題が残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未成年者である高校生を対象とした臨床試験の遂行には成人の場合とは異なる困難さを伴う。本研究では、各高校との調整、高校生本人及び保護者からのインフォームドコンセント、試験中のうがいによる有害事象や不具合の回避については満足のいく結果だったといえる。一方、調査票回収後のデータ整合性チェックにおいては、記入漏れや不整合箇所の再調査に、やや遅れが生じたが、データのクリーニングは順調に進みデータ固定が可能となった。参加した高校生数は757名と目標参加者数に達したものの、同意撤回・データ欠測・うがい実施率不良者が全体で30%みられ、統計学的な件出力不足という結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度及び24年度で収集、クリーニングしたデータを用い、更に詳細な統計解析処理を実施する。多変量解析を加え、主要解析以外にも、介入に影響を与えた因子によるサブグループ解析を行い、平成25年度以降に向けて更に精度の高い臨床試験を計画する。得られた成果を学会発表し、論文として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
データの統計解析のための統計ソフト代、ファイル保存用ハードディスク代、データ収集のための旅費・通信・運送費、データシートに入力・取り込みを行う作業の協力者への謝金、学会・論文発表のための資料代、論文投稿料、掲載料等に使用する。
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