研究概要 |
インフルエンザは毎年、流行を繰り返す重症の急性上気道感染症であり、集団生活を営む学校での予防対策はことさら重要である。本研究ではカテキンを始めとする緑茶成分の、基礎研究において示されるインフルエンザ感染抑制効果に着目し、緑茶うがいによるインフルエンザ予防効果を、高校生を対象としたランダム化比較試験により検証した。研究には、静岡県掛川・小笠地区6高校の全体集会で参加を呼び掛けた高校1,2年生2,838名のうち、本人及び保護者から同意の得られた757名が参加し、緑茶うがい群または水うがい群にランダムに割り付け、1日3回、90日間うがいを行った。その結果、緑茶うがい群及び水うがい群における背景情報は、性別、学年、公共交通機関の利用、かぜの罹りやすさ、茶飲用習慣等において差がなかったが、唯一、部活動で群間差が認められた。インフルエンザ発症者数(抗原陽性例)は、同意撤回及び一度も調査票を記入しなかった10名を除いたFAS (Full Analysis Set) 解析対象747名において、全体で44名(5.9%)認められ、うち緑茶うがい群19名(4.9%)、水うがい群25名(6,9%)であり、緑茶うがい群で発症者が約3割減少する傾向を示したものの統計学的に有意ではなかった(調整オッズ比, 0.69; 95%信頼区間, 0.37-1.28; P = 0.24)。うがい実施率(アドヒアランス)不良者は全体で30%認められ、両群間の比較では、水うがい群(33%)の方が緑茶うがい群(26%)よりも多かった。今回の結果では、緑茶うがいによるインフルエンザ発症者の減少傾向が認められたものの検出力不足から有意な差には至らなかった。予想されたうがいの効果量が少なかった理由として、うがい実施の不徹底、背景因子の影響等、今後研究遂行上の解決すべき課題が残された。
|