研究課題/領域番号 |
23590890
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
喜多 正和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60153087)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 代替医療 / Helicobacter / サイトカイン |
研究概要 |
Helicobacter pylori (H. pylori) 感染による胃炎発症にはサイトカインが関与することをわれわれはすでに報告している。一方、H. pylori感染後の胃粘膜局所におけるサイトカインの発現についてはヒト臨床例においては詳細に検討されているが、マウス感染モデルにおいては不明な点が多い。そこで、まずH. pylori感染後の胃粘膜局所におけるサイトカインの発現を検討した。その結果、H. pylori 感染後のマウス胃粘膜においては、ヒトと同様、IL-1, IL-6, IFN-γ, TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生されていること、また、これらTh1サイトカインに加え、新規のサイトカインであるIL-17も有意に産生されていることを明らかにした。さらに、H. pylori感染後のIFN-γ遺伝子欠損マウスおよびIL-17遺伝子欠損マウスでは有意に胃炎の発症が抑制されていたことより、IFN-γおよびIL-17が病態形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方、薬剤感受性および薬剤耐性H. pylori感染後のサイトカイン産生を比較したがほとんど差は認められなかった。また、漢方薬あるいは生薬による明らかなサイトカイン産生は認められなかった。一方、薬剤耐性H. pylori 感染に有効である漢方薬あるいは生薬を補完・代替療法に応用することを目的に、マウスに薬剤耐性H. pylori 感染させると同時にオウレン、ダイオウ、カンゾウを経口投与すると、有意な抗菌効果が認められた。以上の結果、H. pylori 感染における病態形成機序の一部を明らかにするとともに、生薬が補完・代替療法に応用できる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時における平成23年度の研究実施計画として、1)薬剤耐性H. pylori に対する生体の免疫系を介する間接作用の解明および2)薬剤耐性H. pylori に対する直接作用の機構解明の2点をあげたが、間接作用の解明について計画通りに実施したが、直接作用の解明については実施できなかった。しかしながら、平成24年度に計画していたサイトカイン遺伝子欠損マウスを用いた実験を前倒しで実施したため、全体的には「おおむね順調に進展している」と自己点検評価した。
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今後の研究の推進方策 |
H. pylori 感染による胃炎発症の機構解明については、IL-17は相同性をもつ6個のファミリー分子(IL-17A,IL-17B,IL-17C,IL-17D,IL-17E,IL-17F)からなることが知られているため、今後これらIL-17ファミリー分子およびIL-17関連サイトカインであるIL-15, IL-23などのサイトカインの関与についても検討するとともに、IL-17A遺伝子欠損(KO)マウスおよびIL-17F遺伝子欠損(KO)マウスを用いて生体における役割を解明する。一方、薬剤耐性H. pylori 感染に有効である漢方薬あるいは生薬を補完・代替療法に応用することを目的した研究については、有効であった生薬を治療に使用可能かどうかを検討するため、薬剤耐性H. pylori 感染成立後に経口投与を開始し、その治療効果を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子関連試薬、プラスチック器具、マウスなどの物品購入に1,150,000円、学会発表のための旅費に50,000円使用する予定である。
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