研究課題/領域番号 |
23590891
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
石川 剛 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90372846)
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研究分担者 |
古倉 聡 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80347442)
足立 聡子 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (90546615)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞移入療法 / ナイーブTリンパ球 / がん免疫療法 / NK細胞療法 |
研究概要 |
進行がん患者においては、がんの免疫逃避機構が成立しているために、癌特異的免疫誘導が起こりにくいと考えられている。したがって、進行がん患者においてがんワクチン療法や細胞移入療法の臨床的効果を高めるためには、担がん生体の免疫抑制環境を克服するための複合的アプローチが不可欠である。本研究では、ナイーブTリンパ球療法において、ナイーブTリンパ球からがん特異的細胞傷害活性T細胞(CTL)を強力に誘導できる併用治療の基盤技術を開発し、臨床に応用することを目的としている。平成23年度は、in vitro、in vivoにおいてナイーブTリンパ球療法の効果増強のための基礎的検討を行った。In vivoの検討では、がん細胞への温熱処理により、がん細胞の上皮・間葉転換(EMT)を抑制することを見いだした。一般的に、EMTを起こしたがん細胞は治療抵抗性であるため、その抑制は免疫治療に対する感受性を高める可能性が考えられる。また、熱ショック蛋白の誘導やHLA分子の発現上昇が温熱処理によりおこることも確認しており、がん細胞への温熱処理は複数の機序によりCTL活性が増強されることが期待され、現在検討を進めている。In vivoの検討では、マウス担がんモデルにおいて、ナイーブTリンパ球療法と、ハイパーサーミアとの併用およびNK細胞療法との併用に関する検討を行い、継続している。NK細胞療法との併用では、マウスNK細胞の拡大培養法がほぼ確立しつつあるので、次年度にナイーブTリンパ球との併用療法の効果を確認したい。ナイーブTリンパ球療法の宿主免疫機能に及ぼす影響については、膵癌患者においてPHA刺激による末梢血サイトカイン産生能を評価しており、IFNg産生能が治療介入後に増加した患者の予後は良好で、IFNgの治療前後での増減が独立した予後予測因子であることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス脾臓よりリンパ球を拡大培養して、CD62LビーズでAutoMACS ProSeparatorを用いてナイーブTリンパ球を分離採取しているが、ナイーブTリンパ球の純度が低く満足いくレベルでなかったため、実験の遂行が遅れ気味となった。現在は、ナイーブTリンパ球分離に際して、カラムに2度通すなどいくつかの工夫で、高純度に採取可能となってきている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス担がんモデルを用いて、ナイーブTリンパ球療法の効果増強のための併用療法の基盤を確立し、臨床応用の可能性を探りたい。ナイーブTリンパ球が働くがん微小環境の改善という見地から、温熱療法や抗CTLA4抗体療法などとの併用療法の効果についてin vivoで検討する。さらに、ナイーブTリンパ球による強力な獲得免疫誘導のため、前段階として自然免疫を惹起することが重要であり、その見地からNK細胞療法との併用療法の有効性を検討する。また、ナイーブTリンパ球拡大培養における細胞内酸化ストレスの影響を明らかとするため、担がん患者の血液検体を用いて検討を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、実験試薬(免疫検査試薬、サイトカイン、抗体、マイクロビーズ、カラム、培養液等)や実験動物の購入、研究・調査費用に使用する予定。
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