研究課題/領域番号 |
23590895
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
清原 寛章 北里大学, 大学院感染制御科学府, 准教授 (70161601)
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研究分担者 |
丸山 弘子 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (50129269)
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キーワード | 漢方薬 / 補中益気湯 / 抗がん剤 / メソトレキセート / 粘膜炎 / IRAK-M |
研究概要 |
本研究ではメソトレキセート誘発小腸上皮傷害に対する補中益気湯の改善作用とその作用メカニズムの解析を行うことを目的とする。抗がん剤のメソトレキセートの前処置により作製した小腸上皮傷害モデルマウスへの補中益気湯の投与は上皮組織でのTNF-αやIL-1βのmRNA発現を抑制し、抗炎症作用を示すことが明らかとなった。本作用の発現に関与するメカニズムについて検討を行った結果、IL-1 receptorなどの下流のシグナルカスケードにおける制御性分子のIRAK-MのmRNA発現を補中益気湯の投与がメソトレキセート処置1日後に有意に増強していた。一方、別の制御性アダプター分子として知られるTollipに対しては本漢方薬は影響を与えす、抑制性のサイトカインであるIL-10の発現にも変化は観察されなかった。以上のことから、補中益気湯が炎症性シグナルカスケードの抑制アダプター分子であるIRAK-Mの発現増強作用を介して抗がん剤により惹起される小腸上皮組織での炎症反応を速やかに終息させることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
補中益気湯の抗がん剤による粘膜炎改善効果の作用メカニズムとしては当初IL-10や抗菌タンパクなどの産生増強作用が関与するものと作業仮説を立てていたが、炎症性シグナルカスケードの制御性アダプター分子であるIRAK-MのmRNA発現を増強させる新規のメカニズムを有することが強く示唆された。IRAK-Mは創薬ターゲットして注目されるアダプター分子で、本分子の発現を調節する天然物由来の薬物はこれまでに開発されていない。補中益気湯が本作用を有する知見は本漢方薬の特性を明らかにする上で重要な情報を与えるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに得られた知見をもとに、IRAK-Mの発現増強作用に関与する薬効成分を明らかにする。また、補中益気湯およびIRAK-M発現増強成分を用いてパイエル板や腸間膜リンパ節の免疫細胞の機能(サイトカイン産生、ホーミング受容体発現など)に対する作用についてreal-time PCRやflow cytometricな分析を行う。補中益気湯の当該活性成分と多糖成分や脂溶性低分子成分の上気道粘膜免疫系賦活作用発現への関与について解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の遂行においては、マウスへの投与実験を中心に検討を行う。このため、マウスの購入、飼育、解剖に要する経費として申請課題の研究費を充当する。また、多岐にわたる免疫関連因子の発現変化を追跡することを目的に、real-time PCRや特異抗体を用いた Flowcytometryによる解析を行う。このため、primer設計、mRNA抽出、real-time PCR実施に必要な酵素および蛍光試薬などの購入に研究費を充当する。さらに、IRAK-M発現誘導に関与する活性成分の精製には、精製用のHPLCカラムなどとともにIEC-6細胞を用いたin vitroでの検討が必要であることから、細胞培養用の試薬も研究費から充当する。
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