研究課題/領域番号 |
23590896
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
永井 隆之 北里大学, 大学院感染制御科学府, 講師 (00172487)
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研究分担者 |
清原 寛章 北里大学, 大学院感染制御科学府, 准教授 (70161601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス / 感染症 / 薬学 / 薬理学 / 東洋医学 / 麻黄剤 / インフルエンザ / 自然免疫 |
研究概要 |
インフルエンザ(Flu)は毎年冬期に流行し、39℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身症状が強い重篤な急性感染症である。また近年、高病原性鳥インフルエンザウイルス(FluV)(A/H5N1)のヒトでの流行が危惧され、2009年度には豚型FluV (A/H1N1)がパンデミックを起こした。現在、Flu治療の第一選択薬としてオセルタミビル(OSE)が頻用されているが、OSE耐性FluVの比率の増加などが問題になっている。これらのことから、Fluに対して安全かつ有効に多様な患者に対応するために、治療薬の選択肢の幅を広げることが望まれる。麻黄湯は経験的にFluの治療に用いられているが、基礎研究によるFluに対する有効性の評価や作用機序の検討は十分に行われていなかった。そこで、麻黄湯のFluに対する有効性と薬効機序について、マウスによる評価系を用いて検討している。これまでの検討で、麻黄湯の経口投与により、感染2日後においてFluVを上気道させたマウスの鼻腔及び肺でのFluVの増殖が有意に抑制されることを明らかにした。 そこで今年度は、FluVを感染させたA/Jマウスに麻黄湯を48時間経口投与し、鼻腔洗液及び肺洗液中のインターフェロンα (IFN-α)濃度を測定した。その結果、麻黄湯の投与により、鼻腔洗液及び肺洗液中のIFN-α濃度の上昇は認められなかった。また、脾臓のナチュラルキラー細胞活性を測定したが、麻黄湯の投与により同活性の上昇は認められなかった。 今年度の成果により、麻黄湯の早期の抗FluV活性に、自然免疫系のうち気道におけるIFN-α産生の増強及び脾臓のナチュラルキラー細胞の活性化は関与していない可能性が推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した本研究の目的のうち、平成23年度の研究計画に記載した「小青竜湯及び麻黄湯のインフルエンザウイルス感染に対する効果の作用機序の検討」の中で、「抗インフルエンザウイルス活性の腸管免疫系を介した作用機序の検討」が当該年度中に実施出来なかったが、平成24年度以降の研究計画に記載した「インフルエンザウイルス感染に対する小青竜湯及び麻黄湯中の活性成分の検討」について、麻黄湯の構成生薬一味抜き処方の抗インフルエンザウイルス活性の検討を平成23年度に前倒しして開始出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
麻黄剤及び関連漢方処方のインフルエンザに対する有効性の作用機序並びに活性成分の検討について、交付申請書に記載した研究計画に沿って推進する。特に、平成23年度の研究計画のうち、平成23年度中に実施出来なかった「小青竜湯及び麻黄湯の腸管免疫系を介した作用機序の検討」は、平成24年度から実施する予定である。また、「インフルエンザウイルス感染に対する小青竜湯及び麻黄湯中の活性成分の検討」については、当初の計画以外に麻黄剤以外の漢方処方のインフルエンザに対する有効性を麻黄剤と比較検討することによっても実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、麻黄剤及び関連漢方処方のインフルエンザに対する有効性の作用機序並びに活性成分の検討を実施するための、実験動物代金(マウス)、細胞培養用試薬・プラスチック器具一式代金(抗生物質、培養フラスコ、培養プレート、遠心管等)、サイトカイン測定用ELISAキット代金、フローサイトメーター用試薬一式代金(蛍光標識抗体等)、ウェスタンブロッティング用試薬一式代金(抗体等)、Real time及びRT-PCR用試薬一式代金(プライマー作製等)、活性成分精製用試薬及び器具一式代金として使用予定である。
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