研究課題/領域番号 |
23590898
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中島 日出夫 熊本大学, エイズ学研究センター, 研究員 (00333394)
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研究分担者 |
元雄 良治 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80210095)
小泉 恵太 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (70377406)
源 利成 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (50239323)
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キーワード | がん抑制遺伝子 / 熱ショック蛋白質 / FAM107 |
研究概要 |
癌との関連:作成した抗HITS抗体(ウサギポリクローナル抗体)と組織アレイを利用した大規模スクリーニングを行った結果、癌化に伴ったHITSの発現低下が、組織を拡大して甲状腺癌・乳癌・肺癌・子宮頸癌・精巣腫瘍など複数の臓器で見られた。さらにそれぞれの臓器に対する組織アレイを用いて統計学的解析を施行した結果、乳癌・甲状腺癌ではHITS発現強度と病理学的ステージ分類(TNM分類、なかでもT因子)との間に逆相関関係が見られた。さらに乳癌では、PgR陰性、HER2陽性、Ki67陽性、スキルスタイプでHITSの発現量が高いことを証明した。Tet-ONシステムによる誘導発現系を用いた実験で、癌細胞にHITSをin vivo(ヌードマウスを使ったxenograftモデル)でHITSを誘導発現させると腫瘍の増殖抑制効果が確認された。以上の研究成果をIneternational Journal of Oncology誌に発表した。 神経系における働き:FAM107ファミリー分子の神経軸索伸長時の役割について検討した。PC12細胞(ラット副腎髄質由来の褐色細胞腫)を用いたTranswell Assayにより、NGF(神経成長因子)誘導によるmigration活性を調べたところ、HITS、DRR1の強制発現により、migration活性が上がる事がわかった。PC12細胞を用いた免疫染色から、HITS、DRR1共に、NGFによる分化誘導により核内局在とは別に、伸長突起先端部での分子局在が観察され、これはF-アクチンの局在と良く一致していた。In Uteroエレクトロポレーションによるマウス胚脳皮質神経への遺伝子導入を行い、神経細胞migrationへの影響を調べたところ、少なくともHITSの強制発現はmigrationに影響を与える事をつきとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍との関連については、組織アレイを利用した実験系で主たる臓器を網羅的に解析する事ができた。したがって、癌化における臨床病理学的事項の解明はほぼ完成した状態にあり、国際学会や論文の形で成果発表を続けている。神経との関連も、共同研究者の小泉の尽力で興味深い現象が次々と見つかっていて、もうすぐ成果を発表する段階まで来ている。一方、分子間相互作用の解明を始めとする生化学レベルでの解明や遺伝子改変動物の作成は未だ途上にある。
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今後の研究の推進方策 |
実験に関しては、小泉と共同で神経系の解析に集中して行う。HITSとアクチンとの何らかの相互作用により胚期神経細胞のmigrationに影響を与える事を証明するため、免疫沈降や蛋白分子間相互作用の解析等生化学的実験、マウスやショウジョウバエによるin vivoの実験を計画している。in vivoの系が順調に進めば、KOMP (knockout mouse project)からFAM107Bノックアウトマウスを購入して実験系を組み立てる予定である。さらに、神経発生における影響をマウスやショウジョウバエの胚を利用して解析する。癌化に関しては、いままでの膨大なデータをまとめて総説をはじめとする論文発表、学会発表を継続して行く。その過程で、将来の共同研究の方向性も探って行きたい。特に温熱療法を実際に施行している施設との臨床病理学的研究を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究発表のための資料(書籍等)の収集、情報収集、投稿に関する費用、学会参加のための旅費等に約半分(60万円)、神経系を中心に生化学実験と動物実験に関する費用に半分(60万円)位を予定している。
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