研究課題/領域番号 |
23590901
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
津田 和志 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (90217315)
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キーワード | メタボリックシンドローム / 高血圧 / 酸化ストレス / 細胞膜fluidity / 電子スピン共鳴 / 赤血球 / adipocytokine / 微小循環 |
研究概要 |
本研究においては、細胞膜の物理的性質の検討として、電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法を用い高血圧患者の細胞膜fluidityを測定し、その調節を各種血管内分泌因子との関連から考察した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に低下していた。 既に我々は酸化ストレスの指標のひとつである血中8-iso-prostaglandin F2alpha値は高血圧群で正常血圧群に比し有意に高値であり、赤血球膜fluidityの悪化やNO代謝産物の低下と有意に相関することを報告した。 この成績は酸化ストレスが高血圧の膜機能調節に重要な役割を果たす可能性を示唆するものと考えられる。 一方、adipocytokineのひとつであるadiponectin (ADN)の血中濃度 は高血圧群で有意に低下していた。また血中AND濃度の減少しているほど、赤血球膜fluidityは悪化していた。さらに血中ADN濃度は血中8-iso-prostaglandin F2alpha値と有意に逆相関した。このことはADNが酸化ストレスに対して拮抗的に作用し膜fluidityを改善する作用を有するが、高血圧ではその効果が減弱していることを示すものと考えられる。 以上から肥満に関連した血管内分泌因子が高血圧の細胞膜機能に重要な影響を及ぼし、それらの調和破綻がメタボリックシンドロームの心血管病の成因に一部関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子スピン共鳴法によるメタボリックシンドローム患者の赤血球膜fluidityの測定は順調に行われている。血管内皮機能のバイオマーカーである血漿nitric oxide (NO)代謝産物濃度や、酸化ストレスのマーカーである血漿8-iso-prostaglandin F2alpha濃度、ならびにadipocytokineのひとつである血漿adiponectin濃度についても安定した定量が可能である。そしてこれら因子の関連性、ならびにそれらの膜機能に及ぼす影響と作用メカニズムについて解析をすすめている。 一方、メタボリックシンドローム患者の骨塩含量(bone mineral density)の測定についても、dual energy X-ray absorptiometric methodを用いて順調に測定を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、メタボリックシンドロームの成因である肥満、糖尿病ならびに高血圧の関連を細胞膜レベルの変化からみるため、メタボリックシンドローム患者を対象として、その細胞膜機能を電子スピン共鳴法にて測定し、インスリンやレプチン、アディポネクチンなどの血管内分泌因子の膜機能に及ぼす影響をCa代謝機構との関連から検討する。さらに動脈硬化病変や冠動脈疾患、慢性腎臓病 (CKD) の発症に細胞膜機能異常やこれら内分泌因子がどのように関与するか考察する。また、メタボリックシンドロームにおいて骨代謝動態ならびに全身のCa-balanceと血管病変との関連(骨血管相関)を詳細に解析し、メタボリックシンドロームの統合的な解明のみならず、その治療や合併症の予防に役立てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
メタボリックシンドロームは動脈硬化、脳血管障害、虚血性心疾患、慢性腎臓病(CKD)の危険因子として注目されているが、その血管病変の特徴は明らかではない。そこでメタボリックシンドロームの動脈硬化、血管病変の臨床像を明らかにするため、メタボリックシンドローム患者の脳血管障害の特徴をMRAにて、また冠動脈病変の特徴をmulti-detector CT (MDCT)にて評価する。さらに慢性腎臓病 (CKD)の病態把握のために尿中微量アルブミン量、糸球体濾過量(eGFR)、cystatinC値を測定する。そしてメタボリックシンドロームの血管病変上の特徴から、細胞膜機能や血管内分泌因子の変化が全身の微小循環障害や臓器障害の予測因子となり得るか解析する。 さらに本研究では全身のCa代謝を、dual-energy X-ray absorptiometry (DXA)法を用いた腰椎ならびに全身の骨塩含量 (bone mineral density: BMD) 測定と各種骨代謝マーカーの定量によって評価する。また、超音波法やMDCT法を用いて大動脈、頸動脈、冠動脈の石灰化像を定量するとともに、炎症性サイトカイン、酸化ストレス、ALP活性、RANKL活性との関連を考察する。そして冠動脈病変や頸動脈内膜中膜複合体厚、大動脈伝播速度、上腕動脈内皮依存性拡張反応とあわせ検討し、骨代謝や全身のCa-balanceと血管石灰化を含めた動脈硬化病変、ならびにインスリンを中心とした内分泌因子代謝動態との関連を詳細に解析する。
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