研究課題/領域番号 |
23590904
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
榎本 美佳 久留米大学, 医学部, 助教 (10360281)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 予防医学 |
研究概要 |
DHEAS (Dehydroepiandrosterone Sulfate)は生体の恒常性維持に欠かせない役割を担っていることが明らかになってきており、抗糖尿病作用(耐糖能改善作用)、抗肥満作用、抗動脈硬化作用(血小板凝集抑制作用・平滑筋増殖抑制作用・泡沫化抑制作用など)、免疫賦活作用、抗骨粗鬆症作用など多彩な作用が報告されている。近年米国では、サプリメントとしてDHEASを入手・摂取することが認可されており、若返りの特効薬として脚光を集めているが、その作用については不明な点が多く、人体の恒常性維持や老化予防に好影響を与えるステロイドであるかどうかについては未だ論議を呼んでいる。そこで、これまでのこの研究の実績として、DHEASは以下の特徴を持つことが明らかとなった。(1)副腎皮質より分泌され、C19ステロイド骨格を有し、性腺や末梢組織で必要な時にテストステロンやエストロゲンに転化される。(2)血中のDHEAS値は思春期をピークにして加齢とともに減少していく。(3)男性ではDHEAS値が高値なグループほど生存率が高い。以上より、約27年間におよぶ長期前向き研究で男性においてDHEAS値が高値であるほど長生きであることを報告した。 このことより、長寿としての意義のみでなく抗老化作用の一つとして認知機能の維持も併せ持つことが考えられ、精度の高い2009年度住民検診をもとにDHEASと認知機能との関連を疫学的に検討し、DHEAS値を維持することで認知機能低下を予防できるかを、保存血清によるDHEAS値の測定を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
久留米市田主丸町にて平成21年度に1943名の一般住民検診をすでに行っており、全員の血清を凍結保存している。平成23年度計画上、「凍結保存をしている血清を溶解し、DHEAS測定に必要な血清以外はさらに分注し、凍結保存する。DHEAS測定はRIA法にて行う。DHEASはホルモンであるが、カテコラミンや成長ホルモン等にみられるような日内変動や体位による変動を認めないため、空腹時一般採血時と同時に採血可能であり、保存血で測定に支障はないと考える。2000名に及ぶためできる限り測定するが、残った場合は24年度以降でも測定する。」と示したが、凍結保存の解凍および測定が現在およそ1000名分にまでしか測定できていない。サンプルの蓄積ができていないことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、DHEASと睡眠時間や認知機能との関連を疫学的に検討することである。研究計画は以下のとおりである。i:平成21年度に行った検診のデータサンプルを整理し、解析用に保存する。ii:検診で収集した保存血清を溶解し、DHEASを測定する。iii:測定結果はiで整理したデータとともに保存する。iv:DHEASと睡眠時間、認知機能との関係を統計学的に解析する。v:解析結果をもとに、DHEAS値が高値であるほど認知機能の維持が認められ、その背景に十分な睡眠がとれているかを検討する。 久留米市田主丸町にて平成21年度に1943名の一般住民検診をすでに行っており、全員の血清を凍結保存している。現在、保存血清のDHEAS測定は1000名分終了したが、やや遅れているため速やかに残り1000名のDHEAS測定を進め、その結果を解析可能なようにデータ整理を行い分析を行う予定である。しかし、本研究のもとは世界7ヶ国共同研究の一環であり、私の所属する久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門(旧三内科)の開局1958年より経年的かつ継続的に同一地区にて一般住民検診を2000名に行っている。最近では2009年に大規模な検診を行っており、保存血清を保管しているため、現在から過去のデータまで、業績、資料が膨大に備わっている環境である。また、1999年までの検診はすべてデータベース化済みである。現段階においてすでに研究に着手している。2009年に施行した住民検診を用いるため、現在データベース化および認知機能検査は点数化しており、検診データとともに整理保存された状態である。
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次年度の研究費の使用計画 |
DHEAS測定:残った保存血清を溶解し、DHEASを測定する。解析:DHEAS値の分布をグラフで視覚化し、以前発表したデータサンプルとの分布の相違を観察する。違いがあれば、時代背景からDHEAS値の変移を検討する。DHEASを目的変数とし、従属変数MMSEと単および多変量解析を行う。同様にDHEASと起床・就寝時間、睡眠時間とを単・多変量解析で調べることにより、DHEASを規定する因子を検討する。宇久町検診にてサンプル数を増やすことにより、解析を行う上でより関連性が深まることが予測される。田主丸町の農村地区と宇久町の漁村地区の2地区において生活習慣の相違とDHEASとの関連などを様々な統計手法により分析する。さらに、対象者に平成21年度から数年後の脳卒中の発症調査および認知機能検査(MMSE)を再度行うことにより、非発症者と発症者間にDHEAS値の差、認知機能程度の差、睡眠時間の差に統計学的に有意性があるか否かをt検定およびロジスティック回帰分析を行う。DHEAS値で群分けし、認知機能低下率を調べる。横断かつ縦断的に統計解析を行うことにより、より精度の高い研究とする。発表・論文作成:得られた結果によりDHEASと認知機能の関連について学会発表を行う。それに伴わせて論文を作成し、疫学的に確かめられた有意義なエビデンスとして報告する。
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